最近、『パラレルキャリア』という言葉をよく耳にするようになりましたよね。
「キャリアというくらいだから仕事関係かな?」
「パラレルワールドなら知ってるけど…」
「なんとなくわかるけど副業とはどう違うの?」
そこで、今回の記事では『パラレルキャリア』とはなにか、また『副業』との違いやメリット・デメリットを詳しくご紹介していきます。
パラレルキャリアとは?
パラレルキャリア(parallel career)とは、経営学者のピーター・F・ドラッカーが著書「明日を支配するもの」で提唱した考え方であり、本業と第二のキャリアを両立させるという、これからの生き方や働き方の1つです。
「ドラッカーってどこかで聞いたことあるような…」と思ったそこのあなた、
ハイ、そうです、2010年にベストセラーになった「もしドラ」こと「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」で有名なドラッカーのことです。
ドラッカーは「寿命が延びた現代において、個人はひとつの組織に依存して同じ仕事を続けるだけでなく、それとは別の“第二のキャリア”にも時間や労力の一部を費やすことで新しい世界を切り開くべきだ」と述べています。
言い回しが難しいですね。それでは具体的に説明していきましょう。
「キャリア」とは?
キャリア(career)と一言でいっても色んな意味がありますが、ここでのキャリアは職業のことを指します。
転職回数や経歴など履歴書に書く内容もキャリアといいますし、個人のスキルや知識、経験であったり、働き方や、何を一番に考えて働くのかという「生き方」を指してキャリアと言う場合もあります。
「パラレル」とは?
パラレル(parallel)とは「平行、並列」を意味し、パラレルキャリアとは並列している経歴・経験、つまり複数の経歴を同時並行して身につけることです。
パラレルキャリアがなぜ注目されているのか
“人生100年時代”…なんて言葉、聞いたことありませんか?
人生100年時代とは、「LIFE SHIFT(ライフ・シフト)」の著者であるリンダ・グラットン教授の言葉で、今後われわれの寿命が100歳前後まで延びていくだろうという考え方です。
平均寿命がまだ短かった頃は、若い頃に一度身につけたスキル・技能が定年を迎えるまで価値を発揮していました。
しかし、現在は平均寿命は延び続けているのに、企業や商品・サービスの寿命は私たちよりどんどん短くなってきていています。更にITの進化やAIにより働く時間や既存の職業が減っていき、私たちはいま身につけているスキルだけでは将来が心許なくなってきました。
特に圧倒的知名度のある大企業の経営危機や経営破綻、日本型雇用制度の中核をなしていた終身雇用制度と年功序列賃金制度と企業別労働組合が限界を迎え、私たちはいま勤めている企業自体が急になくなってしまうといった不確実性の恐怖と背中合わせで働いています。
そんな未来に対する不安がある中で、われわれの働き方や雇用形態などワークスタイルも多様化してきました!
企業のフレックスタイム制度やリモートワークの導入、副業の解禁、転職の普及、フリーランスとして独立といったことが一般的になっていく中で、パラレルキャリアとして複数の企業で働く人たちが現れました。
パラレルキャリアの目的
第二のキャリアをもつ目的はなんでしょう。
まず挙げられるのはスキルアップです。他の企業で自身のスキルを試すことで、本業だけでは見えてこなかった自身の伸びしろに気づくことができます。本業以外の場所でたくさんの人と関わるようになるので、視野の拡大にも繋がります。
また、本当はバンドがやりたかった…学生の頃に調理師免許をとったのに事務職をしている…と、夢を諦めていた人も、生活を支える本業があるからこそ、本業と両立して夢への挑戦ができます。
起業したい!でもフリーランスで現在の収入より稼ぐためにはかなり長い時間がかかってしまい、起業できるのはいつになるんだろう…と悩んでいた人も、本業があるから安心して起業する準備を進めていけます。
パラレルキャリアだからこそやりたいことに挑戦できるのです!!
パラレルキャリアと副業の違いは?複業って言葉もあるけど何が違うの?
「2つの企業で働くって、ダブルワークや副業とはなにが違うの?」という疑問をよく耳にしますが、パラレルキャリアと副業はなにが違うのでしょうか。
副業とは?
ズバリ、“収入を増やすこと”を目的に仕事をしているのが「副業」です。
本業の収入だけでは満足できないから、収入を増やすために別に仕事を増やす「副業」に対し、スキルアップのために行う「パラレルキャリア」とでは“目的”が違うのです。
ちなみにバイトの掛け持ちをするのも、収入を増やすための本業と副業の「ダブルワーク」ですね。
>>副業についてより詳しく知りたい方はこちらをご覧ください<<
複業とは?
“複数の本業をもつ”という意味で、最近では「複業」という言葉もできました。
パラレルキャリアとほぼ同じ意味ですが、ビジネスに限定せず夢の実現やボランティアを含むのが「パラレルキャリア」、複数の本業・ビジネスに取り組むことをメインと考えるのが「複業」や「パラレルワーク」と、ニュアンスで分ける考え方もあります。
>>複業についてより詳しく知りたい方はこちらをご覧ください<<
パラレルキャリアのメリット・デメリット
「パラレルキャリアはしてみたいけど…スキルアップって具体的にどういうこと?まだよくわからないから不安…」というあなたのために、メリットからデメリットまで詳しく紹介していきます。
パラレルキャリアのメリット
まずはメリットから紹介していきます!
人脈が広がる
本業でこれ以上は人脈が広がりづらいと感じていた人でも、パラレルキャリアでは会社という組織ではなく様々な人と関わる機会が増えるので、新しい人脈が広がっていきます。
人脈が広がることにより、新しいビジネスチャンスや利益を生み出してくれることもあり、それが本業に繋がることもあります。
思考力が柔軟になる
本業一つだけでルーチンワークをしていると、物事に対する固定概念がつきやすくなったり、感性が鈍くなり考え方や捉え方が偏ってしまったりすることがあります。
本業以外にコミュニティを持ち、刺激を受けたり、違う視点から物事を見ることで多様な物事の見方が養え、私生活にも良い影響を与え充実していくでしょう。
マネジメントスキルやコスト管理能力が特にスキルアップする
本業とパラレルキャリアを両立するために一番大変になってくることは時間管理や自己管理です。
今まで余暇だった時間も活動することになるので、スケジュールや時間の管理が一番重要視されます。また、休みも自分で調整しないと、体調を崩してしまっては元も子もありません。
他にも、売上や経費などが発生する場合、それを自分で管理することになります。
パラレルキャリアをすることにより、マネジメントスキル、時間管理能力、コスト管理能力は格段にスキルアップするでしょう
軽い気持ちで始められる
退職せずに挑戦できるので、「やってみたい」「やるのが好きだから」という理由でも始められます。
収入面で諦めてしまっていた夢の実現や、参加してみたかったボランティア活動、起業するための準備として…キッカケは様々ですが、本業での収入があるからこそパラレルキャリアを始められます。
モチベーションアップに繋がる
先のメリットで紹介したように、違う考えに触れ視野が広がり、人脈も広がり、自身のスキルアップも実感できるようになると、自信にも繋がり、個人のプロ意識も身につきます。やりたいことに挑戦するため、パラレルキャリアによってリフレッシュもでき、本業へのモチベーションアップに繋がります。
企業にとってもメリット
スキルアップや人脈を広げることを目的としたパラレルキャリアは、企業にとっても育成コストをかけることなく人材育成が行えるチャンスです。
就業規則に盛り込むだけで、「この会社の福利厚生はパラレルキャリア可能で魅力的だな」「ボランティア活動をしている社員もいるんだ」など、プラスなイメージにも繋がります。
>>パラレルキャリア(複業)のメリットについてより詳しく知りたい方はこちらをご覧ください<<
パラレルキャリアのデメリット
次はデメリットや注意点をご紹介していきます!
本業に支障がでてしまう
慣れるまでは今まであった余暇の時間がなくなり疲労が溜まったり、スケジュール調整がうまくいかずに本業に支障が出てしまうこともあります。自由時間も確保するなど自分なりの対策を立てましょう。自己管理ができるようになればセルフマネジメントスキルも高まります!
現実逃避していると思われる
まだまだパラレルキャリアという言葉が浸透しておらず、周囲の理解が得にくいこともあります。
何がしたいかわからない人はそう思われがちですので、まずは何がしたいのかをはっきり決めると良いでしょう。
会社の規則違反
まずは勤務先の規約を確認しましょう!副業OKの企業も増えてきていますが、禁止している企業もあります。副業を禁止する就業規則は法律に違反している可能性もありますが、就業先と無駄に揉めることは得策ではありません。パラレルキャリアのメリットを伝え、就業規則の変更を掛け合うのも手かもしれません。
企業にとってのデメリットとは
パラレルキャリアを許可することによって、情報漏えいや優秀な人材が流出するリスクがあります。
しかし、社内では得られない知識やスキルを得て、人脈を広げることにより、それを本業に活かし、事業の貢献に繋がる可能性もあります。
また、優秀な人材を獲得でき、優秀な人材の退職を防ぐことができます。
>>パラレルキャリア(複業)のデメリットについてより詳しく知りたい方はこちらをご覧ください<<
パラレルキャリアの働き方
「まずはなにをしたらいいかわからない…」そんなあなたのために、説明しきれていないパラレルキャリアの働き方をご紹介していきます。
パラレルキャリアを始めるには
働き方と言っても、やりたいことによって始め方は様々です。
一番想像しやすいのは趣味から広げていくパラレルキャリアです。
「音楽が好きだから」「デザインが好きだから」そういう好きを広げていくとやる気にも繋がりますし、モチベーションアップにもなりますね。趣味を極めることにより、得意分野の確立もできます!
次は、自分のスキルアップを目的とするなら、企業から業務委託を受けて働くという形があります。また、クラウドソーシングを利用して在宅(リモート)で仕事をするという形もあります。
「業務委託の受け方もわからないし、そういう自分のスキルアップができそうな企業はどう見つけたらいいの?」と、初めての方はどうしたらいいか不安になりますが、自分にあったパラレルキャリアをマッチングし、契約のサポートもしてくれるサービスがあるので、そちらを利用してみるのも良いでしょう。
最後に、中間団体やボランティアを通じて活動するパラレルキャリアがあります。職業上のスキルや知識を活かしたボランティア活動のプロボノや、災害ボランティアセンターなど、どのボランティアに参加したいか考えて問い合わせてみましょう。
パラレルキャリアの企業の導入例
さて、パラレルキャリアを導入している企業はどんな企業でしょうか。パラレルキャリアをいち早く解禁した企業をご紹介します。
サイボウズ株式会社(Cybozu, Inc.)
サイボウズは1997年(平成9年)に設立されたソフトウェア開発会社です。グループウェア「サイボウズOffice」シリーズなどを販売しており、子会社で通信事業・ネットワークシステム構築・コンサルティングなどを展開しています。
社名の由来は、cyber(電脳)+bozu(親しみを込めて坊主)=Cybozuで、「電脳社会の未来を担う者達」という意味も込められています。
「100人いれば、100通りの働き方」を掲げており、ワークスタイルや契約形態に関係なく、理想でつながり、一緒にチームワークあふれる社会を目指している企業です。
サイボウズの青野社長はフルタイムで働いてほしい、ではなく、少しでも時間を見つけて同じ理想に向かって働いてくれたらありがたいという考えで、自社でもパラレルキャリアを受け入れ、社員にもパラレルキャリアを勧めています。
そのため、サイボウズでは、サイボウズで仕事をしながら個人事業主を始めた方、海外からリモートワークに挑戦している方、月に数時間だけサイボウズに時間を使う方、地方に拠点を置いて週2で本社に出社する方…と、多様な働き方をしている社員がいます!
サイボウズ式というメディアも出しており、青野社長のインタビュー記事や、サイボウズでパラレルキャリアをしてみた生の声が読めるのも魅力的です!
→【オススメ記事】社長から「副業したら?」と言われてショックだった──会社一筋の執行役員が副業を始めるまでの話
株式会社エンファクトリー(en Factory, Inc.)
エンファクトリーは2011年(平成23年)に設立され、オンラインショッピング事業、専門家マッチング事業、プロジェクト開発受託事業を中心にビジネスを展開している企業です。
創業当時から「専業禁止!!~生きる力、活きる力を身に付ける~」という理念を掲げています。もちろん、必ずパラレルワークをしなくてはならないということではありませんが、時によっては自分が主の立場で実践するパラレルワークでこそ、喜び、苦労して身に付く力があるという考えのもと、全体の6割がパラレルワークをしています。
会社でパラレルワークを推進するにあたり、「enTerminal(エンターミナル)」というイベントを半年に1度行い、従業員全員の前で“いま自分が何をやっていて、収支がどのくらいなのか、これからどうしていきたいのか”といった経過発表会を行います。
本業でのスキルを活かし平日の21~22時と土日で活動する方、週10時間稼働でなかなかの固定収入を得ている方、個人でECサイトを立ち上げている方、本業は黙々とやるエンジニアなのでコミュニケーションが多い複業をしている方、愛犬をモデルにご家族でパグの洋服を製造・販売されている方、副社長はハリネズミカフェを経営…など、一緒に働く社員の社外活動を知ることで刺激を与えあい、本業でもいいチームワークが生まれるようです。社員の複業を応援しあうファンにもなり、とても素敵なイベントですね。
また、エンファクトリーは「チームランサー」というチーム支援プラットフォームも運営しています。フリーランスやパラレルワーカーが、個人や組織の垣根を超えて自由にチームをつくり、その能力を発揮していくためのサービスです。
「チームランサーMeetup」というイベントも開催しており、“チーム”としてのパラレルワークの話が聞ける貴重なイベントです!
どの企業も「何故パラレルキャリアを勧めるのか」ビジョンをはっきり持っています。
パラレルキャリアを導入しようと考えている企業は、まず「何のためにやるのか」を明確にして社内制度に取り入れましょう!
>>パラレルキャリア(複業)を導入している企業一覧についてより詳しく知りたい方はこちらをご覧ください<<
パラレルキャリアを実践する人にはどんな人がいるのか?
実際にワースタをご利用いただいて、パラレルキャリアを実践している方の事例をご紹介します!
西居 崇博さん
「本業」「複業」「スノーボーダー」と3つの顔を持つパラレルワーカーです。
スタートアップのBONXに勤めながら、複業支援サービス「ワースタ」にてダイレクトリクルーティングのスカウト業務を行っています。
パラレルワークをすることによって収入が増え、気持ちにも余裕ができたとのこと。
三本 俊輔さん
EMURGOで広報責任者として働く傍ら、複業支援サービス「ワースタ」の広報としてプレスリリースやSNS等の情報発信、取材対応等を行っています。
複業支援という未経験かつ社会的に意義がある領域のスキルを伸ばせていることがメリットと感じているようです。
パラレルキャリアを始めるためにあったら良いスキル
パラレルキャリアによっては利益や売上を自身で管理する場合もあります。収益が出る場合は確定申告が必要になる可能性もありますよね。パラレルキャリアを始めてからでもいいですが、会計を学んでおくと確定申告などの時期になっても慌てずに対処できますね。
>>確定申告についてより詳しく知りたい方はこちらをご覧ください<<
さいごに
今注目を集めているパラレルキャリアは、あなたの可能性を広げる生き方の選択肢です。
本業やひとつのことだけに集中することは悪いことではありませんが、「自分は何がしたかったんだろう…」「今の企業で一生働いていけるのか」と不安になったときに、パラレルキャリアがあれば視野が広がったり、心にゆとりができます。
考えすぎてやりたいことを行動に移せないより、まずはやりたいことに挑戦することが大切なのだと、パラレルキャリアは教えてくれます。
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