個人事業主やフリーランスの方たちは白色申告や青色申告という言葉をよく耳にするのではないでしょうか。
「白色申告よりも青色申告のほうがお得」と言われていますが、あなたはその理由を知っていますか?
白色申告について理解していくと、意外と白色申告のほうがメリットが多い人もいることが分かります。
そこで、今回の記事ではそもそも白色申告とは何か、白色申告をしたほうが良い人、白色申告のメリット、デメリットなどを紹介していきます!
そもそも確定申告とは?源泉徴収とは違う?
そもそも確定申告とは、個人事業主や法人などが納税額を確定させる手続きのことを指します。
個人事業主の確定申告(法人の場合には法人税申告)には、白色申告と青色申告の2つの制度があり、前年の1月1日から12月31日までの一年間で得た所得(収入-経費)を税務署へ申告し、その所得に応じて税金を納めたり、払い過ぎた税金を還付してもらいます。
個人事業主・フリーランスの方で基礎控除額よりも所得がある場合、確定申告をする必要があります。
基礎控除額は2020年より変更となりました。詳しくは以下のリンク先をご参考ください。
>>控除についてより詳しく知りたい方はこちらをご覧ください<<
ただし、確定申告は不要であっても確定申告をした方が何かとメリットもあるため、基礎控除額以下の所得であっても確定申告をしたほうが良いでしょう。
また、確定申告の申告期間は通常、翌年の2月16日から3月15日の間です。この期間中に納税地の税務署へ申告しに行きます。
従来は直接税務署を訪れるのが一般でしたが、近年では、インターネットで確定申告をする方法もあります。
これに対して、源泉徴収とは、事業者が被雇用者の一年間の所得税を給与からあらかじめ差し引く手続きのことを指します。
つまり、会社で源泉徴収をされている人は、原則、確定申告をする必要はないということになります。
ただし、一定の要件を満たす場合には、源泉徴収されていても確定申告をする必要があります。
>>確定申告についてより詳しく知りたい方はこちらをご覧ください<<
白色申告とは?
白色申告とは税務署に開業届を提出し、そのあと廃業届や青色申告承認申請書などを申請していない人が確定申告をするときの制度のことを指します。
青色申告の場合は複式簿記による記帳が義務づけられており、確定申告書と貸借対照表及び損益計算書の提出も必要となりますが、白色申告の場合は単式簿記での記帳で良く、提出書類も確定申告書と収支内訳書だけで問題ないことが特徴です。
青色申告とは?
では、白色申告とよく比較される青色申告とは一体何でしょうか。
青色申告とは、確定申告を行う上での制度で、白色申告と比較して扱われることが多いです。
青色申告者になるためには、開業届を提出した白色申告者の状態から、青色申告承認申請書を税務署に提出する必要があります。
青色申告承認申請書を提出したら白色申告ができないのではないか?と思われがちですが、そんなことはありません。
青色申告承認申請書を提出していても白色申告は可能です。
「青色申告をする予定があるかどうかはわからない」といった方であっても、とりあえず開業届と一緒に提出しておくと良いでしょう。
とはいえ、10万円の青色申告特別控除は白色申告と同様の単式簿記なので、どうせなら10万円の青色申告特別控除を目指して青色申告することをおすすめします。
また、白色申告よりも青色申告のほうがお得と言われる要因には、前述した10万円の青色申告特別控除のほかにも以下のような恩恵があります。
- 青色申告特別控除が受けられる(65万・55万・10万)
- 赤字の繰り越しができる
- 青色事業専従者の給与を経費に算入できる
- 貸倒引当金を必要経費に計上できる
- 少額減価償却資産の特例が認められる
ただし、青色申告でこのようなメリットを受けるためには、事前に青色申告承認申請書を提出したり、単式簿記よりも複雑な複式簿記で記帳しなければいけなかったりとデメリットもあります。
>>白色申告と青色申告の違いについてより詳しく知りたい方はこちらをご覧ください<<
開業届は出す必要がある?
開業届とは、個人事業を開始したことを税務署に宣言する手続きのことを指します。
税務署に開業届を提出し、その後、廃業届や青色申告承認申請書などを申請していない人は自動的に白色申告の扱いになります。
そのため青色申告とは違い、白色申告で確定申告を行うことをわざわざ申請する必要はありません。
また、実際は開業届を提出していなくても罰則はなく、開業届を提出していなくても白色申告をすることができます。
罰則がないとはいえ、開業した方であれば1ヵ月以内に開業届を提出することが義務付けられていますし、何より開業届を出すことによって得られるメリットもあるため、まだ提出していない人は提出しましょう。
青色申告より白色申告をしたほうが良い人
次に、青色申告ではなく白色申告をしたほうがメリットが多いケースをご紹介していきます。
今後3年以内に黒字化しない
青色申告がお得と言われる理由の一つに青色申告特別控除がありますが、これは利益が出ていなければ控除されません。当然ではありますが、利益が出ていなければ控除されるべきお金がないからです。
その上、赤字の場合は確定申告の義務はありません。とはいえ確定申告しなかった場合、国民健康保険料が増えたりローンを組みにくくなったりとデメリットもあるため、それならば比較的楽に申告できる白色申告を選んだほうが良いでしょう。
しかし、青色申告の場合は損失の繰越控除が受けられるため、3年間である程度の利益を出せる見込みがある人は青色申告でも良いかもしれません。
損失の繰越控除とは、3年間のうちで出た損失と利益を相殺し、税額を減らす仕組みです。
今後3年以内に黒字化しないと想定される場合には、青色申告者になっても特別控除や損失の繰越控除のようなメリットを生かしきれないので白色申告をおすすめします。
自分はどちらに当てはまりそうかを考えた上で、青色申告か白色申告かを決めると良いでしょう。
利益が少ない
特に複業をしている人や、フリーランスになりたての人、年度の途中でフリーランスになった方は利益も少ないため控除の対象となる経費も少ないことが大半です。
その場合、控除を受けるために時間をかけて経費を計算し、難しい複式簿記で記帳をすることは割に合わない作業だと言えます。
逆を言えば、所得の多い人ほど青色申告をしている人が多いとも言えますし、青色申告の恩恵を受けやすいと言ってもいいでしょう。
会計の動きが激しくない
青色申告特別控除で55万円、または65万円の控除を得るために必要な複式簿記は、財産や債務の状況、経営成績が簡易的な単式簿記よりも分かりやすくなります。
そのため、日々売上や経費の動きが激しい小売業や飲食業などは、帳簿つけを複式簿記で行うべきだと言えます。
ただし、日々のお金の動きがそれほど激しくなく、週1程度しか経費支払や売上がないことに加えて、売上金額もそれほど大きくないときは、手間を省くために白色申告の方が良いことがあります。
帳簿作成が難しいと感じる
帳簿作成が難しいと感じる人にとっても白色申告は良いです。
前述したように青色申告で55万以上の特別控除を得るためには複式簿記を行わなければなりません。
しかし、白色申告ではよりシンプルな単式簿記で申告可能なため、帳簿作成に対して抵抗のある方や初心者の方は特に安心して行うことができます。
青色申告承認申請手続を行っていない
正確には、青色申告承認申請手続を行っていない人は白色申告でのみ確定申告ができ、青色申告は選択できません。
通常、青色申告承認申請手続きは開業してから2ヵ月以内に行わなければなりません。
2ヵ月以上経っている場合でも青色申告をすることは可能ですが、適用されるのは次の年からになります。
そのため、青色申告承認申請手続を行っていない人は、とりあえず白色申告で確定申告をしておきましょう。
個人事業主・フリーランスが白色申告をするときに必要なこと
次は、個人事業主・フリーランスが白色申告をするときに必要なことや知っておくべきことについて説明していきます。
大きく、領収書・レシートなどの仕訳/記帳/決算/書類作成の4つに分けて説明します。
領収書・レシートなどの仕訳
経費を証明するために必要なものが領収書・レシートなどの書類です。
領収書・レシートなどの書類がなければ、記帳もできません。
事業に関わる出費はすべて経費になるため、きちんと保管しておきましょう。
また、経費として認められるものは以下の通りです。事前に科目別に仕訳しておくことも大事です。
- 消耗品費:文房具やコピー用紙、プリンターのインクなど
- 接待交際費:取引先との会食、お中元やお歳暮などの贈り物
- 旅費、交通費:移動にかかった交通費や、出張費など
- 通信費:電話代、インターネット料金など
- 水道光熱費:水道代、電気代、ガス代など ・・・
その他に経費として認められる科目があります。詳しくは以下のリンク先をご参考ください。
>>個人事業主の経費についてさらに詳しく知りたい方はこちら<<
一年に一回、確定申告前になって大量の領収書・レシートを科目別に仕訳するとなると非常に大変です。きちんと計画的に科目別に仕訳しておくと良いでしょう。
また、事業で得た収入を計算するために請求書や通帳なども必要なので、記帳の際には収入の証拠となるものも揃えておきましょう。
記帳
領収書・レシートを科目別に仕訳し終わったら、今度は記帳を行いましょう。
記帳は、白色申告と青色申告のどちらでも中心となる作業です。
ただし、白色申告の場合は単式簿記という記帳方法で行い、青色申告の場合は複式簿記で行います(
10万円の青色申告特別控除でも良い場合は単式簿記でも可)。
また、記帳頻度は人によって異なります。
毎日、取引や売上がある人は1日の終わりにほぼ毎日記帳するでしょうし、人によっては月末にまとめて記帳作業をおこなう人もいます。
要は、記帳作業を行なう頻度は取引件数に応じて設定されると言えます。
白色申告の記帳作業において、必ず記帳すべきことは以下の4つです。
- 取引年月日
- 入金に関する具体的な内容
- 出金に関する具体的な内容
- 入出金が行われた取引先
また、伝票や領収書は記帳し終えたものとまだ記帳していないものは区別して保管するようにしましょう。二重で計上してしまうことを避けられます。
決算
日々の取引について記録する記帳作業に対して、決算は年度末に行う年に一度の作業となります。
決算作業と一言で言っても、具体的な業務は以下の2つに分けられます。
- 棚卸表の作成
- 減価償却費の計算(※)
※減価償却とは、事業用に購入した建物・機械・設備など、長期的に使用する物の購入代金を、購入した年にいっぺんに経費として計上するのではなく、分割して1年ずつ計上することをいいます。
棚卸表の作成に伴う棚卸は原則として12月31日に行います。
ただし、年度内の業務最終日やその日以降に売上や仕入が発生しない場合は、そのタイミングで行なうことも可能です。
減価償却費については1年間分をまとめて計算するのが通常です。
また、減価償却費の計算は定額法と定率法の2つの方法がありますが、定額法で行われるのが一般ですね。
- 定額法…償却費の額が原則として毎年同額となる
- 定率法…償却費の額は初めの年ほど多く、年とともに減少する
棚卸し表に関しては、5年間の保管義務があるため、使用したあとも処分しないように気をつけましょう。
確定申告書Bと収支内訳書の作成
白色申告には確定申告書と収支内訳書が必要になります。
確定申告書にはAとBがありますが、個人事業主やフリーランスなどの場合は確定申告書Bを用います。
収支内訳書には、まず日々行っている記帳内容と、上で述べた棚卸表と減価償却費の計算内容を書き写していきます。
その次に、収支内訳書を作成するために以下の内容を記入していきます。
- 給料賃金の内訳
- 税理士・弁護士等の報酬・料金の内訳
- 事業専従者の氏名等
- 売上(収入)金額の内訳
- 仕入金額の明細
- 減価償却費の計算
- 地代家賃の内訳
- 利子割引料の内訳(金融機関を除く)
上の事業専従者とは以下に該当する人のことを指します。
- 白色申告者と生計を一にする配偶者やその他の親族
- その年の12月31日現在で年齢が15歳以上
- その年を通じて6ヵ月を超える期間、その白色申告者の営む事業に専ら従事している
このように、収支内訳書を作成することで課税金額の根拠を明らかにすることができ、経営状況について大まかに把握することにも繋がります。
確定申告書と収支内訳書に関しては、7年間の保管義務があるため、使用した後も大切に保管しておきましょう。
楽に確定申告をしたいなら
青色申告でなく、白色申告であっても確定申告に慣れていない人は会計ソフトを利用することをおすすめします。
仕訳や記帳、確定申告書の作成もできるfreee、マネーフォワード、弥生会計などがあります。
会計ソフトも苦手だという方は、税理士に依頼することもできます。
もちろん費用はかかりますが、丸投げして記帳から確定申告まで全て行ってくれるので楽に確定申告ができます。
白色申告のメリット・デメリット
では、白色申告にはどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか?
最後にご紹介していきます。
白色申告のメリット
まず、始めに白色申告のメリットを2つ紹介していきます。
事前申請の手間がない
既に少し述べましたが、青色申告をするためには開業届を提出することに加えて、事前に青色申告承認申請書を提出しなくてはいけません。
それに比べて白色申告は開業届のみで申告することができます。
特に開業したばかりの時期は、やるべきことも多く忙しい人もいます。そのような人にとっては事前申請のない白色申告はありがたいでしょう。
青色申告と比べて記帳や申告が容易
なぜ容易なのか、記帳と申告に分けて説明していきます。
まずは、記帳についてです。
こちらも既に説明しましたが、青色申告で55万円、65万円の特別控除を得るためには複式簿記という記帳方法で日々の記帳を行わなければなりません。
それに比べて、白色申告はそれよりも簡易的な単式簿記という記帳方法が認められているため、青色申告よりも気軽に記帳することができます。
特に、簿記についての知識があまりない人にとっては大きなメリットに感じるでしょう。
次に、申告時についてです。
白色申告、または青色申告で確定申告をするときには確定申告書のほかに、用意しなければならない書類があります。
白色申告の場合は、確定申告書と収支内訳書です。
青色申告の場合は、確定申告書と青色申告決算書が必要です。
青色申告決算書を作成するためには、必然的に貸借対照表や損益計算書などの作成も必要になり、手間と時間がかかります。
このように、白色申告は青色申告よりもハードルが低いというわけです。
白色申告のデメリット
次にデメリットについてです。
今回は白色申告のデメリットをご紹介します。
青色申告で受けられる控除がない
上述したように青色申告では、65万円・55万円・10万円の3種類の特別控除があります。
しかし、白色申告は青色申告のような特別控除がありません。
あえて挙げるとするならば、白色申告専従者控除があります。
ただし、青色申告専従者給与は上限額が決められていないのに対して、白色申告の専従者控除は上限額が決められています。
白色申告も少なからず控除があるとはいえ、青色申告で受けられる控除の方が圧倒的に大きいです。
赤字の繰越繰戻ができない
青色申告では赤字の繰越繰戻ができます。
個人事業主の場合は3年、法人の場合は9年の繰越が可能です。
しかし、白色申告では赤字の繰越繰戻はできません。
ただし、変動所得や被災事業用資金の損失に限っては赤字の繰越が認められています。
変動所得とは、事業所得や雑所得のうち、漁獲やのりの採取、養殖、印税や原稿料などによる所得のことです。
被災事業用資金の損失とは、災害により事業用資産や棚卸資産などに被害を受けた場合の損失のことです。
記帳義務がある
以前は、規定よりも少ない所得であれば記帳義務がない点が、白色申告の大きなメリットでした。
しかし、2014年に白色申告でも記帳が義務化されました。
白色申告は複式簿記ではなく単式簿記での記帳でも良いという利点はありますが、青色申告で受けられる恩恵のことを考えると2014年の記帳義務化以降、白色申告のメリットは半減したという意見もあります。
さいごに
今回は、そもそも白色申告とは何かや白色申告をしたほうが良い人、白色申告のメリット・デメリットなどについてご紹介してきました。
いかがだったでしょうか。
白色申告の良さと青色申告の良さ、どちらを理解するにも、まずは両方のメリットやデメリットについて知ることが大切です。
その上で、どちらが自分に合っているかを判断するようにしましょう。
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