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フリーランス・個人事業主個人事業主のススメ 2021.07.02

個人事業主の屋号って何?個人事業主が屋号を付けるメリットや手続き方法とは

個人事業主として働いていこうと考えたときに、屋号を持つかどうか迷っている人もいることでしょう。

しかし、そもそも屋号とは何なのか、屋号を付けるメリットはあるのか、屋号を変更したいと思ったときにはどうすればいいのかなど、屋号について詳しく理解できていますか?

そこで今回は屋号の付けるときの注意点や手続・変更方法についてご説明していきます。

皆さんが屋号を付ける際に参考にしていただければ幸いです。


屋号とは?

屋号とは、個人事業主の「事業名」「店舗名」などの事業上の名前のことをいいます。

そもそも屋号の起源は江戸時代の頃、武士以外の身分は姓を名乗れなかったため、屋号を使うことで商人を区別したのが始まりです。現在でも「千疋屋」や「井村屋」などの多くの屋号が残っています。

また、屋号と似た言葉で「雅号(がごう)」や「商号」という言葉があります。

雅号は、著述家、画家、書家、芸能関係者などが本名以外につける別名のことをいい、商号は、法人登記する際の会社名のことをいいます。

屋号は絶対に付けなければならない?

個人事業を営む際に屋号は付けていなくても問題ありません。

なぜなら、個人事業主が屋号を付ける義務もなければ、付けなくても罰則がないからです。

また、確定申告書に屋号を記入する箇所がありますが、屋号を付けなくても確定申告の手続きは可能です。

このように屋号を付けない場合でも、個人事業主として活動できるので不安に感じる必要はありません。

屋号を付けるメリット

屋号は付けなくても問題ありませんが、屋号を付けることによって得られるメリットがあります。

下記では屋号を付けるメリットについてご説明していきます。

自分や事業をアピールできる

個人事業主が仕事を獲得するためには、相手の記憶に残すことが重要です。

記憶に残っていると人手が必要となった際に思い出してもらえます。

もちろんクライアントが求めるスキルを持ち合わせていることも重要ですが、名刺交換の際に個人名だけが記載されている名刺だと事業内容がイメージしにくく、記憶に残りづらいです。

しかし、事業内容が明確に伝わり、印象に残る屋号であれば覚えてもらいやすくなります。

そこから仕事に繋がる可能性もあるので、なるべく事業内容が分かりやすくインパクトがある屋号を付けるようにしましょう。

クライアントの信頼を獲得しやすい

個人事業主が個人名で事業を行っていると、「複業感覚の軽い気持ちでビジネスをやっているのか?」「他の事業者と何が違うのかよく理解ができない」といったイメージをクライアントに持たれる可能性があります。

しかし、屋号があることで相手に「きちんとビジネスとして事業を行っているんだな」という印象を与えられます。

また、屋号がある個人事業主は税務署に「個人事業の開業届」を申請しているということになるので、税務手続きをしっかりと行っているという証にもなります。

そのため、個人事業主はクライアントの信頼を得るためにも屋号を付けた方が良いでしょう。クライアントから信頼されることで仕事の依頼が継続したり、新規のクライアントやビジネスの獲得に繋がったりする可能性があります。

屋号付きの銀行口座を開設できる

屋号を持っている個人事業主は屋号付きの銀行口座を開設できます。

不特定多数の顧客から振込入金がある場合、屋号付き銀行口座の方が安心感を抱いてもらいやすいというメリットがあります。

例えばネットショップのような事業を経営していると、商品を購入した人が振込をする際に個人名の口座だと不安になることがあります。

顧客に安心感を与えるためにも、屋号付きの銀行口座を開設することをおすすめします。

また、屋号付き銀行口座に限ったことではありませんが、事業用の銀行口座は開設しておいた方が良いでしょう。事業用の銀行口座があれば事業収入や経費管理がしやすくなり、確定申告の手間が省けたり、さらには誤った内容で申告してしまったりするリスクも防げます。

もし、これが1つの銀行口座でプライベート用と仕事用のお金を管理していた場合、個人のための支払いか、事業のための支払いかが分からなくなってしまう恐れがあります。

そのようなことが起こらないように、個人事業主は事業用の銀行口座を持っていた方が安心です。

屋号付き口座を開設できる銀行

屋号付きの銀行口座は以下のような大手の銀行で開設できます。

中には月額費用が発生したり、既に個人口座を開設していると屋号付き口座の開設ができなったりします。

また、ほとんどの銀行で「個人事業の開業届」の控え(原本)、またはコピーの提出を求められるので、開業届を出さずに個人事業を行っている人はあらかじめ税務署に開業届を提出しておきましょう。

なお、大半の銀行では「屋号名+氏名」の名義でしか口座開設できませんが、ゆうちょ銀行であれば「屋号名のみ」の名義で口座を開設できます。屋号名のみを希望する人はゆうちょ銀行をおすすめします。

屋号を使う場面

屋号はビジネスチャンスを広げるためだけに使用するわけではありません。

以下のようなシーンでも屋号を使用します。

  • 契約書や見積書、納品書、請求書、領収書
  • 名刺やチラシ、ポスター、看板
  • ホームページやブログなどのオンライン上のコンテンツ

このように様々なシーンで屋号を使用することになるため、クライアントや顧客の目に触れる場面が多いです。

屋号は多くの人に見られるものだと理解した上で、屋号を付けるかどうか判断しましょう。

屋号を付けるときに気をつけること

個人事業主は屋号を自由に付けられますが、以下の2つのルールに気をつける必要があります。

法人と間違えられる屋号は付けない

会社法第七条で「会社でない者は、その名称又は商号中に、会社であると誤認されるおそれのある文字を用いてはならない」と定められているため、法人と誤認させる恐れがあるような名称は避けましょう。

他にも「◯◯銀行」や「◯◯証券」「◯◯保険」なども同様に、銀行法・保険業法によって禁止されているので使用できません。

商号登記や商標登録がされている屋号は付けない

商号登記や商標登録がされているものを屋号に付けてはいけません。

商標とは、商品名やサービス名のことをいいます。

例えば、ゲーム機で有名な「PlayStation」を提供している会社の商号は「ソニーグループ株式会社」で、「PlayStation」が商標になります。いずれも既に商号登記、商標登録されているため、屋号として使用できません。

既に商標や商号が登録されているものを屋号で使用すると、権利侵害にあたる可能性が非常に高く、訴訟を起こされる可能性があるので注意しましょう。

商号は法務省が運営する「登記・供託オンライン申請システム」、商標は特許庁が運営する「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」で調べられます。

屋号を付けるときには、この2つを活用して既に同じ商号や商標が登録されていないかを事前に確認しましょう。

屋号の付けるときのポイント

いざ屋号を付けようと思っても、どういう屋号が適しているのか分からない人もいることでしょう。

ここでは屋号を付ける時のポイントをご説明していきます。これを参考に屋号を付けてみてはいかがでしょうか。

事業内容がイメージしやすい屋号を付ける

屋号は、クライアントが事業内容を簡単にイメージできるものにすることをおすすめします。

屋号を見て事業内容が分からないと何をしている人なのかがクライアントに伝わりません。

しかし、屋号を見てどのようなサービスを提供しているかが一目で分かれば、お客さんが店舗まで足を運んでくれたり、問い合わせがきたりと営業効果や集客効果が期待できます。

例えば、下記のような屋号を付けることが望ましいです。

  • ◯◯屋
  • ◯◯商店
  • ◯◯整骨院
  • ◯◯事務所
  • ◯◯美容院
  • フラワーショップ◯◯

商品を販売している場合は「◯◯屋」「◯◯商店」など商品名を屋号の頭に付け、店舗で事業を営んでいる場合は「◯◯整骨院」「◯◯事務所」などを付けるとクライアントは事業内容をイメージしやすいでしょう。

覚えやすい屋号を付ける

クライアントや顧客が覚えやすい屋号を付けましょう。

屋号の名前が記憶に残っていると同じような商品やサービスをクライアントが求めているときに、名前を思い出して再度リピートしてくれる可能性があるからです。

また、屋号が覚えやすいとクチコミサイトやSNSなどにクチコミを書きやすかったり、友人や知人にサービスや紹介しやすかったりと、事業の認知度向上にも効果があります。そこから新規の顧客を獲得できる可能性があります。

そのため、屋号を付けるときは「短く」「聞き取りやすい」を意識した屋号を付けた方が良いでしょう。長文や発音しにくいものほど屋号が覚えづらくなります。

また、短すぎるのも良くありません。短すぎると事業内容が伝わりにくいため、適切な長さの屋号を付けるようにしましょう。

アルファベットや数字を使った屋号を付ける

屋号は以下の文字、記号が使用可能です。

  • 漢字
  • ひらがな
  • カタカナ
  • ローマ字(大文字及び小文字)
  • アラビヤ数字
  • 符号「&」(アンパサンド)
    「’」(アポストロフィー)
    「,」(コンマ)
    「-」(ハイフン)
    「.」(ピリオド)
    「・」(中点)

上記の通り、アルファベットや数字、特定の符号であれば漢字やひらがな・カタカナでなくても問題ありません。

むしろアルファベットや数字を使用した方がインパクトのある屋号になるかもしれません。

しかし、発音がしにくかったり、読みにくい単語を使用していたりするとクライアントや顧客に覚えてもらえない可能性があります。屋号はあくまで対外的に何の事業をしているかを伝えるものだと考えて付けるようにしましょう。

人に言っても恥ずかしくない屋号を付ける

覚えてもらいやすく、インパクトがある屋号を付けた方が良いとお伝えしてきましたが、人に言いにくくなるような屋号は避けましょう。

インパクトを与えたいがあまり、独特な屋号を付けてしまうと自分でも名乗ることに抵抗を覚えてしまう可能性があります。

それだけでなくクライアントや顧客からも屋号名ではなく個人名で呼ばれてしまうため、せっかく付けた屋号が浸透しません。

屋号を使う場面」でも記載した通り、意外と屋号を使用するシーンは多いです。

屋号の名称はなるべく慎重に選ぶようにしましょう。

ドメインが取れるのか確認する

ドメインとは、簡単に言えばインターネット上の住所のようなものです。

複業紹介サービスサイト「ワースタ」のURLは「https://worsta.com/」ですが、「worsta.com」部分がドメインにあたります。

個人事業主であれば自身のホームページを作成することがほとんどですが、その際にドメインを屋号で取りたいと考えている人もいるのではないでしょうか。

屋号を登録した後にドメインが既に使用されていたなんてことにならないよう、事前にドメインが使用できるか確認しておくことをおすすめします。

ドメインが使用できるかどうかは、ドメイン登録サービスで調べると良いでしょう。例えば、「お名前.com」では空きドメインの検索から取得までできます。

屋号に地域名を含める

屋号に地域名を含めると覚えてもらいやすく、地元の人から親しまれます。

特に地域密着型サービスや、定期的に通う必要があるサービスは新規顧客獲得に繋がるでしょう。

なぜなら、地域密着型サービスや定期的に通う必要のあるサービスは、遠方のお店より近隣のお店を利用しがちだからです。その際、インターネットで「地域名+サービス内容」で検索されたとき自身のホームページを見つけてもらえる可能性があります。

このような理由から「地域名+事業内容」の屋号を付けると良いでしょう。

屋号を付ける際の手順

基本的に屋号は自由に決められます。その上、商号に比べて付けるときのルールも厳しくありません。

しかし屋号を決めた後に、似たような屋号で似たような事業内容を行っている他の事業者がいるかもしれません。

屋号は法律による拘束力がないのでどうしても似たような屋号は存在しますが、万が一、同じ市区町村で同じ屋号を付けてしまった場合、クライアントや顧客から誤解を受ける可能性があります。

そうならないように以下の手順で屋号を付けることをおすすめします。

  1. 少なくとも10個以上の候補を出す
  2. 商号登記、商標登録がされているか調べる
  3. 商号登記、商標登録がされていれば候補から削除する
  4. 残った候補を検索エンジンで検索する
  5. 候補名と同じ会社やサービス名などのWebサイトがあれば候補から削除する
  6. 残った候補内で最も事業内容が分かりやすく、印象に残るものを屋号にする

また、自身で決めた屋号を一度第三者に見てもらうのも良いでしょう。自分にとって事業内容が分かりやすく印象に残る屋号だと思っていても、他の人から見た際にはそうではない可能性があります。他人の意見も聞きつつ、屋号を決めていきましょう。

屋号の登録手続き

屋号は「開業届」「確定申告書」の主に2つの手続きで登録する方法があります。

それぞれの手続きについてご説明していきます。

開業届から登録

個人事業主が事業を始める際には必ず「開業届」を税務署を提出しなければなりません。

その開業届に屋号の名称を記入する欄があるので、その箇所に任意の屋号を記入して提出すれば登録できます。

しかし、屋号の登録は義務ではないため、屋号を使用しなくても個人事業主として事業を行うことは可能です。開業届を提出するタイミングで屋号を決めかねている人は、確定申告書からでも登録が可能なのでその際に登録すると良いでしょう。

>>開業届についてもっと詳しく知りたい方はこちらの記事がおすすめです。<<

確定申告書から屋号を登録

確定申告書にも屋号の名称を記入する欄があるので、その箇所に任意の屋号を記載して提出することで登録できます。開業届を提出するときに屋号を登録していない人は、確定申告書を提出するタイミングで屋号の登録手続きを行ってみてはいかがでしょうか。

しかし開業届と同様で、必ず屋号を登録しなければいけない義務はないので、屋号を使用しなくても確定申告に差し障りはなく、屋号を付けていないからといって課せられる税金が変わるわけではありません。

>>確定申告書についてもっと詳しく知りたい方はこちらの記事がおすすめです。<<

屋号に関するQ&A

ここからは屋号に関する様々な疑問を解決していきます。

屋号を複数持つことは可能か

複数の事業を行い、事業ごとに屋号を持ちたいと考えている個人事業主もいることでしょう。

結論から言いますと、個人事業主が屋号を複数持つことは可能です。

例えば、下記のケースであれば屋号を複数持つことをおすすめします。

  • エンジニアのかたわら、飲食店を経営するケース
  • アパート経営をしつつ、ライターの仕事をしているケース
  • Webマーケティングの仕事をしながら、経営コンサルタントとして働くケース

もちろん一つの屋号で複数の事業を行っても問題ありません。

しかし、例えば「◯◯焼肉店」という屋号でエンジニアの事業を行っていれば、クライアントは違和感を覚えます。その上、焼肉店にエンジニアの業務を依頼しようと考えるクライアントはいません。

このように事業によって屋号を使い分けなければいけないケースがあります。

もし屋号を追加する場合は、確定申告書の屋号欄に既存の屋号と追加したい屋号を記入すれば問題ありません。

ただし、複数の事業を行っている場合、事業所得を合算して確定申告しなければいけないので収益の管理には注意しましょう。

屋号の変更はできるのか

屋号の変更に法律の規則はなく、何度でも変更ができます。

また、屋号だけの変更であれば特に届け出は必要ありません。

屋号の変更後に提出する確定申告書に新しい屋号を記載すれば、すぐに変更手続きが完了します。

そのため、屋号を新しいものに変更しても手続きに慌てる心配はないでしょう。

しかし、屋号を何度も変更したり、短期で変更したりするとクライアントの信頼が損なわれ、社会的な信用度が下がる可能性があります。

クライアント側からすれば、短期間で何度も屋号が変わると「何か都合が悪いことでもあったのか?」「隠したいことがあるのか?」など不安に感じてしまいます。

また、屋号の変更に伴い店舗の看板や販促品の屋号名も変更しなければならず、必要以上にコストが掛かってしまうことがあります。

無駄なコストをかけず、既存のクライアントからのブランドイメージを損わないためにも屋号を頻繁に変更するのは避けた方が良いでしょう。

法人化するとき屋号をそのまま商号にできるのか

個人事業主として事業を行っていく上で、軌道に乗ってきた際に法人化を検討する人もいることでしょう。

その際、クライアントや顧客などから既に認知されている屋号を、別の名称に変更してまで商号を付けることに抵抗を覚える人もいるのではないでしょうか。

しかしご安心ください。使用していた屋号は商号として登記できます。

ただし商号を登記する際は、会社の一部門を表すような商号は認められなかったり、「株式会社」のような法人形態を表す言葉を含めなければならなかったりと、定められた条件を満たす必要があります。

ゆくゆくは法人化を検討しているという人は、商号登記の申請が通らないなんてことにならないよう、あらかじめ屋号を付ける際に商号についての条件を確認した上で屋号を決めると良いでしょう。

屋号に個人名は使用していいのか

既にネームバリューがある人は、自身の名前を屋号にしたいと考えることもあるでしょう。

もちろん屋号に個人名を使用しても問題ありません。しかし、それでは屋号を付ける意味がなくなってしまいます。

例えば結婚をして姓が変わった個人事業主であれば、屋号を個人名にすると良いかもしれません。

旧姓を屋号として使用することで、クライアントや顧客先に姓が変わったことを伝える手間が省けます。

もちろん屋号に旧姓を使用せずとも旧姓で仕事をすることは可能ですが、クライアントや顧客に姓が変わったことを報告せず、事業用の口座が結婚後の姓になっていると、振込の際に混乱させてしまう可能性があります。

屋号に旧姓を使用し、「屋号名のみ」の名義で屋号付き口座を開設すれば混乱させることもありません。

さいごに

個人事業主が屋号を付けて事業を行っていくとメリットがたくさんあることがご理解いただけたのではないでしょうか。

屋号の手続きも「開業届」または「確定申告書」の欄に屋号を記載するだけで簡単です。

また、屋号の変更に制限はなく、届出も必要ありません。

しかし、安易に何回も屋号を変更することは社会的な信用を失うことにつながるので注意しましょう。

クライアントの視点に立ち、事業内容がわかりやすく覚えやすい屋号を付けることが大切です。

注意点を意識した上で事業を行っていく際にメリットとなる屋号を付けてみてはいかがでしょうか。

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