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フリーランス・個人事業主フリーランス・個人事業主とは 2021.04.16

個人事業主とフリーランスの違いとは?個人事業主のメリット・デメリットや税金にまつわること

最近、様々な就業形態が注目されていますが、皆さんは「個人事業主」あるいは「フリーランス」についてどれほど知っていますか?また、どのような印象をお持ちでしょうか?

どちらの言葉も聞いたことはあっても、「詳しくは説明できない」「2つの違いがわからない」という方も多いかと思います。

そこで、今回の記事では個人事業主とは何か、フリーランスとどこが異なるのか、また個人事業主のメリット・デメリットや税金についてなどを解説していきます。


フリーランスとは

フリーランスとは特定の企業や団体、組織に専従しない独立した形態で、仕事単位での契約を結んで働くスタイルのことをいいます。このような働き方のため、フリーランスの契約形態は基本的には業務委託契約です。

業務委託契約について詳しくは以下で解説していきます。

業務委託契約について

業務委託契約とは、自社の業務を外部の企業や個人に委託する契約のことです。

業務委託契約には委託された業務を完成させることを約束し、完成された仕事の結果に対して報酬が支払われる「請負契約」と、一定期間の業務を遂行することで報酬が支払われる「委任契約」の2種類の契約形態があります。フリーランスは企業と業務委託契約を結んでいることがほとんどです。

業務委託契約の性質を雇用契約との違いから見てみましょう。

雇用契約とは労働者が労働に従事し、使用者が労働に対して報酬を支払うことを約束する契約です。

雇用契約と業務委託契約を比較した場合、業務委託契約では「時間や場所の制約が少ない」「自分で請け負う仕事を選べることから得意分野の仕事に専念できる」といったメリットがあります。

一方で、雇用契約の場合は時間や場所の自由度が低く、自分のやりたい仕事ができるとは限りません。

しかし、雇用契約であれば安定した仕事と収入が得られますが、業務委託契約では継続的に仕事を受注できる保証はありません。契約内容によっては突然契約解除となり、収入がゼロとなることもあるため、安定した収入を得る難易度が高く、社会的な信用や保証を受けにくいというデメリットがあります。

個人事業主とは

個人事業主とは、税務上の区分で、法人を設立せず個人で何らかの事業を行っている人のことを指します。

ここで言う事業とは、継続・反復・独立して行う仕事のことです。サラリーマンも「継続・反復」した仕事を行っていますが、企業に所属しており個人として独立していないため、個人事業主には該当しません。

個人事業主とフリーランスの違い

個人事業主とフリーランスは似ているようで厳密には違いがあります。

それは、個人事業主は「税務上の区分」で、フリーランスは「働き方」を指した言葉ということです。

「開業届」と呼ばれる「個人事業の開業・廃業等届出書」を税務署に提出することで、税務上の区分である個人事業主として認められます。

基本的にはフリーランスで法人を設立していなければ、個人事業主ということになります。

しかし、例えば飲食店や小売店のオーナーを営む個人事業主はフリーランスとは呼べません。なぜなら、時間や場所がある程度定められており、業務を請け負って仕事をしているわけではないからです。

そのため、一概に「個人事業主=フリーランス」と呼べないケースもあるので注意しましょう。

個人事業主、フリーランスと自営業の違い

個人事業主、フリーランスの違いを説明しましたが、よく混同されがちな「自営業」との違いについてもご説明します。

自営業とは、言葉の通り「自ら事業を営む人」のことです。そのため、個人事業主やフリーランスも自営業に含まれます。

しかし、個人事業主は法人を設立せず個人で何らかの事業を行っている人のことを呼ぶのに対し、自営業の場合は法人を設立して事業を経営している人を総称して呼ぶこともあります。

個人事業主になるために必要な開業届とは

「開業届」とは、正式には「個人事業の開業・廃業等届出書」といい、個人事業を開始したことを税務署に申告するための届出書です。

この開業届を税務署に提出するだけで「個人事業主」として認められます。

開業届の書類は税務署に必ず置いてあります。印鑑や身分証があれば、その場で手続きができます。また、国税庁の「個人事業の開業届出・廃業届出等手続」からダウンロードして必要事項に記入し、郵送で提出することも可能です。

提出先税務署は原則として自分の住所を管轄する税務署になります。

以下の記事では、開業届の記入方法やメリット・デメリット、開業届に関する注意点について詳しく解説しているので、興味のある方はご覧ください。

>>開業届について詳しく知りたい方はこちら<<

個人事業主・フリーランスのメリットとデメリット

個人事業主とフリーランスは厳密に区別すると異なりますが、重なる部分もあります。

基本的に、開業届を提出したかどうかで区別していることから、大枠としては同じ扱いです。そのため、両者のメリット・デメリットにも大きな違いはありません。

ここでは個人事業主・フリーランスのメリット・デメリットを合わせてご紹介します。

個人事業主・フリーランスのメリット

  • 働く場所や時間、仕事内容を自由に選べる
  • 開業・廃業のハードルが低い
  • 開業費は任意償却か均等償却を選択できる
  • 実力次第で収入を大きく伸ばせる
  • 人間関係をコントロールできる
  • 最大65万円の所得控除を受けられる
  • 赤字は3年繰越せる
  • 家族への給与を必要経費にできる
  • 30万円未満の固定資産は即時償却の経費にできる
  • 自宅兼オフィスの場合、家賃や電気代の一部も経費にできる
  • 事業所得とその他所得を合算できる
  • 屋号※で口座管理できる

※屋号とは、店や事務所の名前のことです。

個人事業主・フリーランスのデメリット

  • 仕事や収入が安定しないリスクがある
  • 厚生年金から国民年金に変わってしまう
  • 国民健康保険が会社との折半負担から全額自己負担になる
  • 国民健康保険に加入する手続きを自分で行わなければならない
  • 社会的信用が低い
  • 確定申告を自分でしなければならない
  • 孤独を感じやすい
  • 有給休暇がない

以下の記事では個人事業主・フリーランスのメリットとデメリットについて詳しく紹介しているので、興味のある方はご覧ください。

>>個人事業主・フリーランスのメリットとデメリットについて知りたい方はこちら<<

個人事業主・フリーランスになる前にやっておくべきこと

個人事業主・フリーランスとして独立する前に、以下のことをやっておくとスムーズに活動開始できます。

  • クレジットカードを発行しておく、住宅ローンを組んでおく
  • 人脈をある程度形成しておく
  • 自分の強みや需要のあるスキルを理解し、計画的に学んでおく
  • 在宅勤務が増える可能性が高いため、最低限の労働環境を整えておく
  • 健康保険や国民年金などの手続きを忘れずに終えておく

個人事業主の税金

個人事業主は「所得税」「住民税」「個人事業税」「消費税」の4つの税金を自分で納めなければならなりません。

税金は国に納める「国税」と地方公共団体に納める「地方税」の2つに区分されます。

個人事業主として納めなければならない4種類の税金のうち、所得税は「国税」、住民税と個人事業税は「地方税」に分類されます。また、消費税の場合は「国税」と「地方税」どちらにも当てはまります。

納税を怠った場合、追徴課税というペナルティが課せられてしまうので、忘れないように注意しましょう。

それでは、4種類の税金について簡単にご説明します。

所得税

所得税とは1年間のすべての所得に対して課せられる税金です。個人事業主が納める税金の中で最も大きな割合を占めています。

所得税は課税所得金額が高くなればなるほど税率も高くなる「超過累進税率」という方法で決定されます。税率は5%から45%の7段階に区分されています。

詳しい税率については国税庁の「所得税の税率」をご覧ください。

所得税は、納税者自らが所得金額とそれに対する所得税額を計算し、確定申告書を税務署に提出する必要があります。その後、確定した税額を納付します。

住民税

住民税とは都道府県民税と市区町村民税をあわせた呼び方で、都道府県・市区町村の住民に課される税金のことです。

住民税は、均等な税額によって課税する「均等割」と、前年の所得金額に応じて課税する「所得割」があり、この2つを合算した金額を納税します。

均等割は都道府県や市区町村によって異なりますが約5,000円ほどで、所得割は前年の所得金額に対して一定の税率を乗じて計算されます。所得割の税率は「市町村民税6%」と「道府県民税4%」で、合計10%という標準税率が定められています。

個人事業主であれば、確定申告をすれば別途住民税の申告の必要はありません。

個人事業税

個人事業税とは個人事業主が営む事業のうち、地方税法等(法定業種)で定められた事業に対して課される税金です。

現在、法定業種は70の業種があり、ほとんどの事業があてはまるようになっています。

税率は業種によって異なります。以下は業種ごとにかかる税率をまとめた表です。

区分

第1種事業

(37業種)

第2種事業

(3業種)

第3種事業

(30業種)

第3種事業

(30業種)

税率 5% 4% 5% 3%
事業の種類

物品販売業, 運送取扱業 ,料理店業,

遊覧所業, 保険業,船舶定係場業,

飲食店業, 商品取引業, 金銭貸付業,

倉庫業, 周旋業, 不動産売買業,

物品貸付業, 駐車場業, 代理業,

広告業, 不動産貸付業, 請負業,

仲立業, 興信所業, 製造業,

印刷業, 問屋業, 案内業,

電気供給業, 出版業, 両替業,

冠婚葬祭業, 土石採取業, 写真業,

公衆浴場業(むし風呂等), 電気通信事業,

席貸業, 演劇興行業, 

運送業, 旅館業, 遊技場業

畜産業, 水産業, 薪炭製造業

医業, 公証人業, 設計監督者業,

公衆浴場業(銭湯), 歯科医業, 弁理士業,

不動産鑑定業, 歯科衛生士業, 薬剤師業,

税理士業, デザイン業, 歯科技工士業,

獣医業, 公認会計士業, 諸芸師匠業,

測量士業, 弁護士業, 計理士業,

理容業, 土地家屋調査士業,司法書士業,

社会保険労務士業, 美容業, 海事代理士業,

行政書士業, コンサルタント業, クリーニング業,

印刷製版業

あんま・マッサージ又は指圧・はり・きゅう・柔道整復

その他の医業に類する事業 蹄師業

引用:東京都主税局「個人事業税

確定申告を行っていれば、別途個人事業税の申告手続きをする必要ありませんが、確定申告書の「事業税に関する事項」欄に必要事項を記入する必要があります。

消費税

消費税とは、商品・製品の販売やサービスの提供などの取引に対して課せられる税金です。令和元年10月1日より消費税の税率は、標準税率10%(国税7.8%、地方税 2.2%)と軽減税率8%(国税6.24%、地方税1.76%)の複数税率となりました。

事業者は、商品・製品の販売やサービスの提供などの際に消費者等から受け取った消費税から、経費にかかった消費税を差し引きして、その差額を納付します。

一定の条件を満たしている事業者の場合、納税の義務が発生しません。

以下のいずれかに該当すれば納税の義務が免除されます。

  • 事業開始2年以内
  • 基準期間の課税売上高が1,000万円以下

「基準期間の課税売上高」とは、個人事業者の場合は原則として前々年の課税売上高のことをいいます。

事業開始1年目、2年目の個人事業主は、課税を判定する前々年の課税売上高がないので、無条件で免税になります。ただし、基準期間内の課税売上高が1,000万円以内であっても、特定期間(その年の前年の1月1日から6月30日までの期間)に課税売上高が1,000万を超えた場合は課税対象となるので注意しましょう。

基準期間、あるいは特定期間の課税売上高が1,000万円を超えた場合は、「消費税課税事業者届出書」を税務署に提出する必要があります。

以下の記事では個人事業主の税金について詳しく紹介しているので、興味のある方はご覧ください。

>>個人事業主の税金について知りたい方はこちら<<

個人事業主・フリーランスは青色申告?白色申告?

個人事業主・フリーランスの方は確定申告をしなければなりません。

所得金額が48万円以下の場合は納める税金がないため確定申告の必要はありませんが、独立して生活をしている方であれば年間所得が48万円以下のケースはあまりなく、ほとんどの方が確定申告をする必要があるでしょう。

確定申告をする際、青色申告がいいのか、白色申告がいいのか、どう違うのかわからないといった方もいるかと思います。

青色申告の場合、最大で65万円の所得控除が受けられる上に、赤字の繰越繰戻や、青色事業専従者給与が経費に算入できるなど何かとメリットが多くあります。

ただし、事前に青色申告承認申請書を税務署に提出したり、複式簿記という複雑な帳簿付けをしたりと手間がかかります。

>>青色申告について知りたい方はこちら<<

一方で、白色申告の場合は特に届出を提出する必要もなければ、単式簿記というシンプルな帳簿付けで問題ありません。

ただし、青色申告のような特別控除もなく赤字の繰越繰戻もできないため、節税効果がほとんどないといったデメリットがあります。

青色申告より白色申告をした方が良い人は、利益が少なく控除の対象となる経費も少ない人や、複式簿記という複雑な帳簿付けが苦手という人などです。

>>白色申告について知りたい方はこちら<<

青色申告、白色申告どっちがいいのかは人によるため、それぞれのメリット・デメリットを理解した上で選ぶことをおすすめします。

個人事業主の保険や年金

雇用されている会社員であれば会社の健康保険組合と厚生年金に加入できますが、個人事業主になった際には国民健険と国民年金に切り替える必要があります。また、会社員時代は会社が保険や年金の煩雑な手続きや支払いを行ってくれていましたが、個人事業主の場合は自分で加入手続きから支払いまでを行わなければなりません。

健康保険に関しては、会社に勤めていたころに加入していた健康保険を任意継続できます。

協会けんぽおよび健康保険組合に加入していた期間が2ヶ月以上あれば、退職後も2年間は健康保険を継続できるという制度です。この制度を利用するためには、退職日の翌日から20日以内に申請しなくてはならないので注意しましょう。

一方で、厚生年金に関しては、個人事業主になると加入できなくなります。

個人事業主は退職金がないことも考慮すると、個人型確定拠出年金(iDeCo)、国民年金基金、小規模企業共済などを活用して自分で老後の年金対策を行う必要があります。

以下の記事では個人事業主の保険や年金について詳しく紹介しているので、興味のある方はご覧ください。

>>個人事業主の保険や年金について知りたい方はこちら<<

お金にまつわる個人事業主と法人の違い

個人事業主と法人とでは、設立時にかかる費用や手続き、税金の種類が大きく異なります。

ここからは異なる点を詳しくご紹介していきます。

設立時・廃業時の違い

まず、法人と個人事業主とでは、設立時に大きな違いがあります。

例えば「株式会社」を設立する場合は、登録免許税や収入印紙代などで約20~30万円の設立費用や、登記、定款などの作成が必要になります。

一方で、個人事業を始める場合は、税務署に開業届を提出するだけです。

また、会社が廃業となった際、解散や清算の登記などに手間がかかりますが、個人事業を廃業にする際は、税務署に届出を提出するだけです。

税金の仕組みの違い

個人事業主には約10%の住民税や、3~5%の個人事業税、5~45%の所得税、8%または10%の消費税が課せられます。特に所得税は、所得が高くなれば高くなるほど税率も高くなる累進課税制度が採られているので、たくさんの利益を生み出している個人事業主ほど税金で損をする可能性があります。

一方で、法人は「法人3税」と呼ばれる法人税法人住民税法人事業税が課せられます。

まず法人税とは利益から経費を差し引いた所得に対して課される税金のことです。税率については会社の規模と年間所得によって変化します。

大まかに説明すると以下のようになっています。

  • 資本金1億円以下の中小法人に課せられる法人税は所得が800万円までの金額には税率15%、800万円を超える金額については税率23.40%
  • 中小法人以外に課せられる法人税率は23.40%

詳しくは、国税庁の「法人税の税率」をご覧ください。

次に、法人住民税とは法人が納める住民税のことで、支払額は法人税割と均等割で構成されています。

法人税割は「法人税額×住民税率」によって計算され、均等割は定額の税金です。均等割は「資本金」、「従業員数」、「事業を行っている地区」によって異なります。例えば、東京23区、資本金1,000万円以下で従業員が50人以下の場合であれば、均等割は7万円になります。

均等割の金額について詳しくは各都道府県のホームページか、総務省の「法人住民税・法人事業税の税率採用状況」をご覧ください。

最後に、法人事業税とは、法人が事業を行う際に利用する道路や消防、港湾といった公共サービスに対する経費として課税される税金のことです。法人事業税は各地方公共団体に納められるもので、事業所得が赤字の場合は支払わなくていい決まりになっています。

法人事業税の計算方法は「所得×法人事業税率」です。

法人事業税率は各都道府県によって税率が異なるほか、課税所得や事業開始年度、法人の種類によっても異なります。

具体的な税率は各都道府県の税率判定を通じて行われるので、詳しくは上記の法人住民税の均等割と同様に各都道府県のホームページか、総務省の「法人住民税・法人事業税の税率採用状況」をご覧ください。

個人事業主の所得税は所得が高くなれば高くなるほど税率も高くなる累進課税制度ですが、法人税の場合は所得が高くなったとしても税率は23.40%にとどまります。しかし、利益が出ていなくても法人住民税の均等割が必ず発生するので数万円の税金がかかってしまいます。

そのため、法人では利益を多く出せている場合は税金面で有利ですが、利益をほとんど出せていない場合は損をする可能性があります。

こうした法人と個人事業主の税金の仕組みの違いが、個人事業主を選ぶか法人を選ぶかを検討する際の一つの基準になります。

法人化を検討する事業所得の目安

上述したように、個人事業主としてたくさんの利益を出せるようになった場合、法人税率が一定の法人に移行した方が税金面で有利になることがあります。しかし、具体的に利益がいくらになれば法人化した方が税金面で有利になるのか、境界線が気になるところです。

税額に影響を与えるのは事業所得だけではないので、事業所得がいくらを超えると法人化したほうがいいとは断言できないのですが、一般的に法人化を検討する目安とされているのは、「事業所得500万円~1,000万円」程度だと言われています。

ざっくりと考えると、法人税率の上限である約30%を超えるのが、個人所得約700万円のラインになります。そのため、個人所得が700万円を超える場合は法人に利益を残して、法人税を支払った方が税額を圧縮できます。

ここではシミュレーションとして【事業所得500万円/東京都23区在住(自宅兼事務所)】の場合で、個人事業主と法人とではどのくらい税金が異なるのか計算をしてみましょう。

なお、分かりやすく各種所得控除は120万円で統一します。また、法人化の場合は、事業で発生した利益は全額役員報酬として損金に算入することとします。

個人事業主として税金を納める場合

所得税:(事業所得500万円-青色申告特別控除65万円-各種所得控除120万円)×所得税率10%-所得控除額9.75万円=21.75万円

復興特別所得税:所得税21.75万円×税率2.1%=0.45675万円

住民税:(事業所得500万円-所得控除120万円)×税率10%+均等割0.5万円=38.5万円

個人事業税:(事業所得500万円-事業主控除290万円)×法定税率5%=10.5万円

納めるべき税金の合計金額は、20.25万円+0.45675万円+38.5万円+10.5万円=約70万円

法人として税金を納める場合

所得税:(役員報酬500万円-給与所得控除144万円-各種所得控除120万円)×所得税率10%-所得控除額9.75万円=13.85万円

復興特別所得税:所得税13.85万円×税率2.1%=0.29085万円

住民税:(役員報酬500万円-給与所得控除144万円-各種所得控除120万円)×税率10%+均等割0.5万円=24.1万円

法人住民税:7万円

納めるべき税金の合計金額は13.85万円+0.29085万円+24.1万円+7万円=約45万円

結果として、シミュレーション上では個人事業主ならば約70万円、法人ならば約45万円の税金が課せられるので、法人化したほうが約25万円ほど得をする計算になりました。この差の最大の要因は法人から給与という形で個人へ支払うことで、給与所得控除を活用できる点にあります。

ただし、最初にも指摘したように、事業所得だけで税額が決まるわけではないので、事業所得が500万円ならば法人化した方が良いとは断言できません。

例えば、個人と法人とでは加入する社会保険は異なるので、社会保険料の負担額を考慮に入れなければなりません。

加えて、このシミュレーションでは所得を全額役員報酬として損金に算入することを前提として計算しましたが、実際は役員報酬を損金に算入するためには「定期同額給与」「事前確定届出給与」「業績連動給与」のいずれかに該当しなければならないという条件があります。

いずれかの条件を満たせなければ役員報酬は損金に算入できません。また、条件を満たしていたとしても不相当に高額な部分の金額は損金に算入できず、結果的に法人税および法人事業税が課せられることになります。そのため、このシミュレーションが全てのケースに通用するわけではありません。

なお、役員報酬や、損金に算入させるための条件について詳しく知りたい方は国税庁の「役員報酬・役員賞与など」をご覧ください。

以上を踏まえると、税金面で有利になるかどうかはその人個人によるものであり、「事業所得500万円~1,000万円」というラインの間であれば法人化した方が必ず税金面で有利になると断言できるわけではないので、正確な判断をしたい場合は税理士にシミュレーションを行ってもらうことをおすすめします。

個人事業主が法人化するメリット・デメリット

ここまで、個人事業主が法人化することによって税金面で有利となる場合があるとお伝えしてきました。しかし、法人化することで得られるメリットは税金面以外でも存在します。

ここでは、法人化するメリットとデメリットをご紹介します。

個人事業主が法人化するメリット

  • 社会的信用が得やすくなる
  • 経費に計上できる範囲が広くなる
  • 金融機関から融資が受けやすい

個人事業主が法人化するデメリット

  • 設立費用や資本金、厚生年金保険や健康保険などコストがかさむ
  • 赤字でも法人住民税を納めなければならない

個人事業主・フリーランスへの支援制度

最後に、個人事業主やフリーランスの方を支援する制度をご紹介します。

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者持続化補助金」とは、小規模事業者の生産性向上や持続的発展、地域の雇用創出を目的として支給される補助金です。補助金額は最大で50万円が支給されます。

2021年も実施が決定されており、公募期間は現在未定となっています。

この制度の対象である小規模事業者とは、以下の条件に該当する事業者です。

事業内容 常時使用する従業員数
宿泊・娯楽業を除く商業・サービス業 5人以下
宿泊業・娯楽業 20人以下
製造業など 20人以下

補助金の申請の流れ

①事業支援計画書の作成・交付依頼

まず、申請の際には地域の商工会議所の確認が必要となります。

日本商工会議所への提出の前に、地域の商工会議所に経営計画書・補助事業計画書の写しを提出のうえ、「事業支援計画書」の作成・交付を依頼しましょう。

②応募期間に作成した書類を送付し、結果を待つ

必要書類一式を応募期間内に日本商工会議所に郵送します。

書類をもとに日本商工会議所による審査が行われ、申請から約2ヶ月ほど経つと、採択・不採択の結果が通知されます。全ての申請者が採択されるわけではないため、書類作成には力を入れて取り組みましょう。

③所定の期間内に実績報告書を提出

補助金の交付が決定したら、補助事業の実施を開始します。補助事業の終了後は、定められた期日までに実績報告書を提出しましょう。

報告には、領収書や請求書など事業に関わる書類も必要となります。

④補助金の交付

実績報告書や提出した書類をもとに、書類に不備がないかどうかに関して数ヶ月にわたる確認が行われます。また、経費が当初の目的通りに使われているかどうかも確認されます。万一、目的通りに使われていなけば補助金は支給されないので、注意しましょう。

ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業(ものづくり補助金)

ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」とは、中小企業、小規模事業者を対象に、新たなサービス開発や生産プロセスの改善といった設備投資を補助するために支給される補助金です。

支給金額は、事業累計ごとに設定されており、一般型では1,000万円、グローバル展開型では3,000万円、ビジネスモデル構築型では1億円と定められています。

募集は2021年2月に締め切りを迎える5次締切まで行われる予定です。5次締切以降に当制度の募集が行われるかは現在未定ですが、予算に残余があれば行われる可能性もあるとされています。

採択率は公募ごとにばらつきがあるものの、平均して4割程度です。基本的に設備投資の支援を目的としているため、支援の目的と乖離のある使い道だと採択されません。そのほか、収益を見込めるアプローチかどうかも審査の対象になります。

補助金の申請については、電子申請のみです。

申請にあたり、「GビズID」が必須となります。GビズIDとは、複数の行政サービスにアクセスできる認証システムです。

このGビズIDを取得するためには別途手続きをする必要があり、ID発行まで2~3週間ほどかかるので、なるべく早めに取得しておきましょう。

また、申請の際にはPDFで事業計画書を提出する必要があります。こちらも忘れずに事前に作成しておきましょう。

サービス等生産性向上IT導入支援事業(IT導入補助金)

サービス等生産性向上IT導入支援事業(IT導入補助金)」とは、中小企業を対象に、業務のさらなる効率化や業務プロセスの改善を目的に用いられる汎用的なITツールの導入に活用される補助金です。

支給金額は、A類型は30万円~150万円未満、B類型は150万円~450万円、補助率は費用の1/2で設定されています。公募期間は2020年12月下旬が締切で、2021年の募集開始時期は未定となっています。

申請方法はweb上で行います。

まずITポータルで申請マイページを開設し、マイページログイン後、基本情報や必要書類の添付、導入したいITツール情報など必要事項を記入します。提出後、事務局による審査を経て、採択が決定されます。

採択率は公募ごとに変わりますが、平均すると約50%ほどです。

事業承継補助金

事業承継補助金」とは、中小企業、小規模事業者を対象に、事業継承のために行われる新しい取り組みにかかる費用を補填する目的で支給される補助金です。

2017年から毎年公募しており、2020年も3月31日~6月5日まで公募が行われました。2021年に実施するかは現在未定です。

事業継承補助金には「後継者承継支援型」と「事業再編・事業統合支援型」の2種類があります。

「後継者承継支援型」は、経営者交代を契機として、新しいチャレンジを行うにあたって必要となる費用の一部を補填する制度です。

原則の支給金額は補助率が1/2で最大225万円まで支給されます。さらに事業所や既存事業を廃止する場合には最大225万円の上乗せ額が支給される仕組みになっており、補助上限額の225万円に上乗せ225万円を足した450万円が上限となっています。

ただし、特別な条件を満たすことで、原則枠以上の補助金も支給されます。特別枠には「ベンチャー型事業承継枠」と「生産性向上枠」の2つがあり、補助率は2/3、補助上限額は300万円、上乗せ額最大300万円を足した合計600万円が上限となっています。

「事業再編・事業統合支援型」は、M&Aを契機に生産ラインの変更や新製品開発など新しい取り組みにかかる費用の一部を補填する制度です。

原則の支給額は、補助率1/2以内、補助上限額450万円、上乗せ額450万円の最大900万円が支給されます。また、特別枠にあたる「ベンチャー型事業承継枠」と「生産性向上枠」では、補助率2/3以内、補助上限額600万円、上乗せ額600万円の最大1,200万円が支給されます。

事業継承補助金の採択率は以下のようになっています。

2018年事業継承補助金採択状況

類型募集時期申請数採択数採択率
Ⅰ型「後継者承継支援型」1次募集48137477.8%
Ⅰ型「後継者承継支援型」2次募集27322482.1%
Ⅰ型「後継者承継支援型」3次募集755573.3%
Ⅱ型「事業再編・事業統合支援型」1次募集22011954.1%
Ⅱ型「事業再編・事業統合支援型」2次募集432558.1%
引用:「平成29年度補正事業承継補助金

2019年事業継承補助金採択状況

類型募集時期申請数採択数採択率
Ⅰ型「後継者承継支援型」1次募集71052373.7%
Ⅰ型「後継者承継支援型」2次募集32913441.0%
Ⅱ型「事業再編・事業統合支援型」1次募集20410953.4%
Ⅱ型「事業再編・事業統合支援型」2次募集1213024.7%
引用:「平成30年度第2次補正事業承継補助金」

生涯現役起業支援助成金

生涯現役起業支援助成金」とは、生涯現役で働き続けられる社会をつくることを目的に、起業時の年齢が満40歳以上の方を対象に支給される補助金です。

この補助金には、「雇用創出措置助成分」と、それに付随する「生産性向上助成分」の2つがあります。

「雇用創出措置助成分」とは、従業員を新たに雇用した際に支給される補助金です。

具体的には、起業時の年齢が40歳を超える人が、40歳未満の人を3名以上、40歳以上60歳未満の人を2名以上、60歳以上の人を1名以上新しく雇用した場合に、募集や採用などの雇用に関わる費用が補填されます。

ただし、どのタイミングで雇用をしても補助金が支給されるわけではなく、事前に提出した計画書に記載した計画期間内に社員を雇用しなければならないので注意しましょう。

補助される金額は、起業した人の起業時の年齢によって定められています。起業時の年齢が40歳以上60歳未満の場合、助成率は1/2、助成額の上限は150万円になり、起業時の年齢が60歳以上の場合、助成率は2/3、上限額は200万円となります。

一方、「生産性向上助成分」とは、雇用創出措置助成分を受けた後、一定期間のうちに生産性が6%以上向上している場合に「雇用創出措置助成分」の1/4の額が支給される制度です。一定の期間とは、起業時の会計年度から3年度経過後の会計年度までを指します。

補助金を受け取るには、計画が終了した日の翌日から2ヶ月以内に労働局へ必要な書類を提出する必要があります。書類をもとに審査が行われ、無事に通過すれば助成金が支給される流れになります。

なお、生涯現役起業支援助成金を受け取るためには、起業日から数えて11ヶ月以内に「雇用創出措置に係る計画書」を管轄の労働局に提出し認可をもらっておくことが必須条件となっているので、忘れないように注意しましょう。

まとめ

個人事業主とフリーランスについて詳しく解説してきましたが、この2つは似ているようで厳密には異なるということがおわかりいただけたのではないでしょうか。

個人事業主やフリーランスの道を歩むのは決して楽ではありません。勝負をする分野や事業計画を綿密に設計した上で、始めるかどうか検討するようにしましょう。

この記事が今からフリーランスや個人事業主を始めようとしている方のお役に立てば幸いです。

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