みなさんは、「控除」についてくわしくご存知でしょうか?
控除は税金について考える場合に、とても重要な概念です。知っているのと知らないのとでは、自分の課税金額が大きく変わる可能性もあります。
そこで今回は、控除とは何か、所得控除の種類、青色申告特別控除や税額控除との違い、どのように適用すれば良いのか、控除の計算方法など、控除に関する疑問を一挙まとめてご紹介します!
控除とは何か?
まず始めに、「控除」とは何でしょうか。
純粋に意味だけを調べると、「ある金額から一定の金額を差し引くこと」と出てきます。
しかし、一般的には控除は税金について考えるときに使用するケースがほとんどです。
税金における控除とはそもそも何なのか、具体的にどのような控除があるのかをご紹介します!
控除の意味って?
税金における控除とは、一般に、所得から一定金額を差し引くことを言います。
収入を得たときにはたいていの場合、所得税がかかります。しかし、その収入すべてに税金が掛かっているわけではありません。
まず、収入から経費または給与所得控除額を引き、所得を求めます。
その所得から所得控除をした金額に所得税がかかります。
控除を適用することで、結果的に納める税金の額を少なくすることができます。
所得から一定の金額を差し引くという表現から、現金が戻ってくると勘違いする方も多いですが、控除されたため支払うべき税金が安くなるという仕組みです。
そもそも、なぜ控除のような仕組みが存在しているのでしょうか?
それは納める税金の額が、能力や環境に応じて変化する仕組みになっていることが関係しています。
つまり、控除という仕組みで税金の公平性を保ち、個々の事情を汲み取っているのです。
それでは、どのような控除があるのか見ていきましょう。
給与所得控除とは
給与所得控除は、会社員やアルバイト・パートのような給与所得者のためにある控除です。
フリーランスや個人事業主の場合、売上から経費を引いた金額が所得になります。
所得控除とは
所得控除とは、個人の所得税を計算するときに、所得金額から差し引くことができる控除のことをいいます。
所得控除には社会保険料控除や配偶者控除など、全部で14種類あります。
この所得控除は、所得税を計算する前に控除されます。
税額控除とは
税額控除とは、所得税を計算した後にその金額から差し引く、住宅ローン控除や寄付金控除のような控除のことをいいます。
既に述べたように、控除には所得控除と税額控除という2つの仕組みがあります。
所得控除と税額控除については、「確定申告って何?誰が行う必要があるのか?目的からやり方まで完全明解!」で詳しい説明をしています。所得税の計算方法についての記載もあります。
所得控除を種類別に徹底解説
次に、所得控除を種類ごとにご紹介します。
所得控除は全部で15種類あるので、1つずつ見ていきましょう。
基礎控除
対象となる人:収入があるすべての人
控除される金額:下図をご参照ください。
個人の合計所得金額 | 控除額 |
2,400万円以下 | 48万円 |
2,400万円超 2,450万円以下 | 32万円 |
2,450万円超 2,500万円以下 | 16万円 |
2,500万円超 | 0円 |
(国税庁から引用:No.1199 基礎控除)
この基礎控除は、収入があるすべての人に適用される控除です。
2019年分の確定申告までは38万円の基礎控除ですが、2020年分の確定申告からは48万円に引き上げられます。
ただし、多くの人の場合、給与所得控除額は10万円引き下げられるという改正も同時に行われますので、実質変化がない人も多いです。セットで頭に入れておきましょう!
控除を受けるための手続き:
この基礎控除はわざわざ申告する必要はなく、アルバイトやパートの人にも自然に適用されます。
社会保険料控除
対象となる人:自分または配偶者・その他親族の社会保険料を納めた人
控除される金額:その年に支払った社会保険料の全額
控除を受けるための手続き:
年末調整で申請するか、確定申告書の該当欄に記載しましょう。確定申告の際は、社会保険料の金額を証明する書類を、確定申告書や「給与所得者の保険料控除申告書」に添付するか、提示します。
社会保険料控除は、原則加入することになっているので、多くの人に適用される控除です。
その年に社会保険料として支払った額は全額控除されます。
よく勘違いされがちなのは、「その年」に支払った額が控除されるという点です。
昨年や来年分の社会保険料を今年支払った場合は、全額が今年の控除として差し引かれるため注意が必要です。
医療費控除
対象となる人:自分または配偶者・その他親族のために支払った医療費が1年間で10万円(総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等の5%)を超えた人
控除される金額(最高で200万円):(実際に支払った医療費)-(保険金のように補填される金額)-(10万円)
上の式のように、実際にかかった費用の全額が控除されるわけではなく、そこから保険金や10万円を差し引いた額だけが控除されます。
条件については1人で10万円を超えるというわけでなく、配偶者やその他親族にかかった医療費の合計額です。
また、医療費控除の特例として、2017年からはセルフメディケーション税制が始まりました。これによって、自ら行う手当てのために使用した医薬品費が条件を超えた場合、控除に含むことができるようになりました。
控除を受けるための手続き:
所轄税務署に電子申告するか、確定申告書を提出します。具体的には、「医療費控除の明細書」を確定申告書に添付するか、提示します。また、領収書・源泉徴収票も用意しておきましょう。
なお、医療費控除は年末調整では対応不可なので自分で税務署に申告する必要があります。
生命保険料控除
対象となる人:生命保険料を納めた人
控除される金額:新契約と旧契約で異なります。下図をご参照ください。
旧契約(2011年12月31日までに契約)の場合
年間の支払保険料等 | 控除額 |
25,000円以下 | 支払保険料等の全額 |
25,000円超 50,000円以下 | 支払保険料等×1/2+12,500円 |
50,000円超 100,000円以下 | 支払保険料等×1/4+25,000円 |
100,000円超 | 一律50,000円 |
新契約(2012年1月1日以降の契約)の場合
年間の支払保険料等 | 控除額 |
20,000円以下 | 支払保険料等の全額 |
20,000円超 40,000円以下 | 支払保険料等×1/2+10,000円 |
40,000円超 80,000円以下 | 支払保険料等×1/4+20,000円 |
80,000円超 | 一律40,000円 |
(国税庁から引用:No.1140 生命保険料控除)
このように、旧契約と新契約で分かれていることに加えて、自分の年間支払保険料で控除額は変化するので注意しましょう。
控除を受けるための手続き:
年末調整で会社に申請するか、確定申告書の生命保険料控除欄に記載できます。確定申告の際は、支払いを証明する書類もしくは「電磁的記録印刷書面」を確定申告書に添付するか、提示します。
地震保険料控除
対象となる人:地震保険料を納めた人
控除される金額:下図をご参照ください。
区分 | 年間の
支払保険料の合計 |
控除額 |
(1)地震保険料 | 50,000円以下 | 支払金額の全額 |
50,000円超 | 一律50,000円 | |
(2)旧長期損害保険料 | 10,000円以下 | 支払金額の全額 |
10,000円超 20,000円以下 |
支払金額×1/2+5,000円 | |
20,000円超 | 15,000円 | |
(1),(2)両方がある場合 | - | (1),(2)それぞれの方法で計算した金額の合計額 (最高50,000円) |
(国税庁から引用:No.1145 地震保険料控除)
控除される金額は、以上のように区分分けされています。
全額控除というわけではなく上限は5万円なので注意しましょう。
控除を受けるための手続き:
年末調整で申請するか、確定申告書の該当欄に記載します。確定申告の際は、支払いを証明する書類を確定申告書に添付するか、提示します。
配偶者控除
対象となる人:控除を受ける年の12月31日の段階で、控除を受ける本人の合計所得が1,000万円以下で、かつ次の4つの要件のすべてに当てはまる配偶者がいる人
- 民法の規定による配偶者であること(内縁関係の人は該当しない)
- 納税者と生計を一にしていること
- 年間の合計所得金額が38万円以下(2020年分以降は48万円以下)であること(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
- 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと又は白色申告者の事業専従者でないこと
控除される金額:下図をご参照ください。
控除を受ける納税者本人の
合計所得金額 |
控除額 | |
一般の控除対象配偶者 | 老人控除対象配偶者 | |
900万円以下 | 38万円 | 48万円 |
900万円超 950万円以下 | 26万円 | 32万円 |
950万円超 1000万円以下 | 13万円 | 16万円 |
(国税庁から引用:No.1191 配偶者控除)
以前までは配偶者控除を受けられるかどうかの基準は配偶者の所得が38万円以下かどうかでしたが、令和2年分の確定申告から48万円に引き上げられました。
ただし、一般の控除対象配偶者の控除額の上限は38万円で変更がないので注意しましょう。
控除を受けるための手続き:
年末調整で会社に申請するか、確定申告書の該当欄に記載します。
ただし、配偶者が国内に居住していない場合は、配偶者であることが証明できる書類(例:戸籍の附票の写し)と、配偶者の生活費のために支払ったことが証明できる書類(例:クレジットカード利用明細書、送金証明書)が必要です。
配偶者特別控除
対象となる人:以下の要件を全て満たす人
【配偶者特別控除の要件】
(1) 控除を受ける納税者本人のその年における合計所得金額が1,000万円以下であること
(2) 配偶者が、次の要件全てに当てはまること
- 民法の規定による配偶者であること(内縁関係の人は該当しません)
- 控除を受ける人と生計を一にしていること
- その年に青色申告者の事業専従者としての給与の支払を受けていないこと又は白色申告者の事業専従者でないこと
- 年間の合計所得金額が38万円超123万円以下(令和2年分以降は48万円を超え133万円以下)であること
(3) 配偶者が、配偶者特別控除を適用していないこと
(4) 配偶者が、給与所得者の扶養控除等申告書、または従たる給与についての扶養控除等申告書に記載された源泉控除対象配偶者がある居住者として、源泉徴収されていないこと(配偶者が年末調整や確定申告で配偶者特別控除の適用を受けなかった場合などは除きます。)
(5) 配偶者が、公的年金等の受給者の扶養親族等申告書に記載された源泉控除対象配偶者がある居住者として、源泉徴収されていないこと(配偶者が年末調整や確定申告で配偶者特別控除の適用を受けなかった場合等を除きます。)
控除される金額:配偶者の所得に応じて変化します。下図をご参照ください。
控除を受ける納税者本人の合計所得金額 | ||||
900万円以下 | 900万円超 950万円以下 |
950万円超 1,000万円以下 |
||
配 偶 者 の 合 計 所 得 金 額 |
48万円超 95万円以下 | 38万円 | 26万円 | 13万円 |
95万円超 100万円以下 | 36万円 | 24万円 | 12万円 | |
100万円超 105万円以下 | 31万円 | 21万円 | 11万円 | |
105万円超 110万円以下 | 26万円 | 18万円 | 9万円 | |
110万円超 115万円以下 | 21万円 | 14万円 | 7万円 | |
115万円超 120万円以下 | 16万円 | 11万円 | 6万円 | |
120万円超 125万円以下 | 11万円 | 8万円 | 4万円 | |
125万円超 130万円以下 | 6万円 | 4万円 | 2万円 | |
130万円超 133万円以下 | 3万円 | 2万円 | 1万円 |
(国税庁から引用:No.1195 配偶者特別控除)
このように、配偶者の所得が48万円を超えた場合でも、要件に全て該当していれば配偶者特別控除を適用することができます。
控除を受けるための手続き:
年末調整で会社に申請するか、確定申告書の該当欄に記載します。
ただし、配偶者が国内に居住していない場合は、配偶者であることが証明できる書類(例:戸籍の附票の写し)と、配偶者の生活費のために支払ったことが証明できる書類(例:クレジットカード利用明細書、送金証明書)が必要です。
扶養控除
対象となる人:以下の要件を全て満たす親族(配偶者を除く)を扶養している人
【扶養控除の要件】
- 納税者と生計を一にしていること
- 年間の合計所得金額が48万円以下であること
(令和元年分以前は38万円以下であること) - 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと、又は、白色申告者の事業専従者でないこと
- 16歳以上の人
控除される金額:下図をご参照ください。
区分 |
控除額 |
||
一般の控除対象扶養親族 |
38万円 |
||
特定扶養親族 |
63万円 |
||
老人扶養親族 |
同居老親等以外の者 |
48万円 |
|
同居老親等 |
58万円 |
(国税庁から引用:No.1180 扶養控除)
※1 その年12月31日現在の年齢が16歳以上の人
※2 その年12月31日現在の年齢が19歳以上23歳未満の人
※3 その年12月31日現在の年齢が70歳以上の人
※4 納税者又はその配偶者の直系尊属(父母、祖父母など)であり、かつ納税者又はその配偶者と同居している人
この扶養控除とは、配偶者以外に、生計をともにする年間所得が38万円以下の16歳以上の親族を扶養している場合、扶養控除が適用されます。
控除額は38万円から63万円の間で設定されています。
控除を受けるための手続き:
年末調整で申請するか、確定申告書の該当欄に記載しましょう。
ただし、扶養親族が国内に居住していない場合は、親族関係を証明できる書類(例:戸籍謄本の写し)と生活費のために支払ったことが証明できる書類(例:クレジットカード利用明細書、送金証明書)が必要です。
ひとり親控除
対象となる人:婚姻関係と同様の事情にある人が存在せず、生計を一にする子を持ち、合計所得金額が500万円以下の人
控除される金額:35万円
ひとり親控除は、「寡婦・寡夫控除」の改正に伴い新設されました。
令和2年分以後から申請できます。
控除を受けるための手続き:
年末調整で申請するか、確定申告書の該当欄に記載しましょう。
寡婦控除
対象となる人:ひとり親に該当せず寡婦である人
控除される金額:27万円
一般に、寡婦・寡夫とは、結婚後に配偶者と死別、もしくは離婚して現在も再婚していない人を指します。
寡婦は以下のように定義されます。
寡婦:合計所得金額が500万円以下であり、次のいずれかに該当する。
- 夫と離婚後に婚姻しておらず扶養親族がいる
- 夫と死別後に婚姻をしていない
- 夫の生死が分からない
なお、令和元年分以前は寡夫控除も存在しましたが、令和2年分以後、寡夫控除は新設された「ひとり親控除」に含有される形となります。
理由は、寡夫は以下のように定義されるため「ひとり親」に該当するからです。
寡夫:以下全てに該当する。
- 合計所得が500万円以下である
- 妻と死別後に婚姻をしていないか、妻と離婚後に婚姻をしていないか、妻の生死が分からない
- 生計を一にする子がいる
控除を受けるための手続き:
年末調整で申請するか、確定申告書の該当欄に記載しましょう。必要書類は特にありません。
勤労学生控除
対象となる人:合計所得金額が75万円以下(令和元年分以前は65万円以下)の勤労学生
控除される金額:27万円
勤労学生とは、学校に通いながら働いている学生のことを指します。
控除を受けるための手続き:
「扶養控除等(異動)申告書」を勤務先に提出するか、確定申告書の該当欄に記載しましょう。
障害者控除
対象となる人:障害者、または障害者を扶養している人
控除される金額:障害者→27万円、特別障害者(障害等級1級)→40万円、同居特別障害者→75万円
障害者控除は、障害者本人、または障害者を扶養している人を対象に控除される所得控除です。
車椅子代のような障害に関する様々な諸費用を加味しています。
控除を受けるための手続き:
年末調整で申請するか、確定申告書の該当欄に記載しましょう。
雑損控除
対象となる人:災害、盗難、横領によって資産に損害を受けた人
【雑損控除の対象になる資産の要件】
以下のいずれにも当てはまること。
- 納税者、または納税者と生計を一にする配偶者やその他の親族で、その年の総所得金額等が48万円以下の者
- 棚卸資産若しくは事業用固定資産等又は「生活に通常必要でない資産」のいずれにも該当しない資産であること
※「生活に通常必要でない資産」とは、例えば、別荘など趣味、娯楽、保養又は鑑賞の目的で保有する不動産(平成26年4月1日以後は同じ目的で保有する不動産以外の資産(ゴルフ会員権など)も含まれます。)や貴金属(製品)や書画、骨董など1個又は1組の価額が30万円超のものなど生活に通常必要でない動産をいいます。
控除される金額:下の式をご参照ください。
雑損控除の控除額は、次の2つのうち金額の高い方です。
- (差引損失額)-(総所得金額等)×10%
- (差引損失額のうち災害関連支出の金額)-5万円
見落としがちですが、盗難も雑損控除の対象になり得ります。
そのため、被害にあった場合は証拠も兼ねて、被害届を警察に提出しておくようにしましょう。
控除を受けるための手続き:
確定申告書の該当欄に記載しましょう。そして、受けた損害による支出を証明する書類を確定申告証明書に添付するか、提示します。
なお、雑損控除は年末調整では対応不可なので自分で税務署に申告する必要があります。
寄附金控除
対象となる人:特定の寄附をした人
控除される金額:1年間に支出した特定寄附金の額の合計額か、または1年間の総所得金額等の40%相当額かのどちらか低い金額-2000円
国や地方公共団体、特定公益増進法人などへの寄附金はもちろんのこと、近年よく話題になっている「ふるさと納税」も寄附金として扱うことができます。
控除を受けるための手続き:
確定申告書の該当欄に記載しましょう。そして、寄付先から交付された寄付金の受領証を確定申告書に添付するか、提示します。他にも、寄付金の種類によって必要になる書類が異なります。
なお、寄付金控除は年末調整では対応不可なので自分で税務署に申告する必要があります。
小規模企業共済等掛金控除
対象となる人:小規模企業共済などの掛金を支払った人
控除される金額:掛金の全額
控除額は掛金の全額になるため非常に節税に大きな効果をもたらすでしょう。
近年では、小規模企業共済の掛金のほかに、iDeCoのような個人型年金加入者掛金もたびたび目にするようになりました。これらを含めて小規模企業共済等掛金控除の恩恵として受け取ることができます。
控除を受けるための手続き:
年末調整で申請するか、確定申告書の該当欄に記載しましょう。確定申告の際は、掛金を支払った証明書を確定申告書に添付するか、提示します。
青色申告の特別控除とは何か
今まで、所得控除の種類について説明してきましたが、所得控除とは別に「青色申告特別控除」というものがあります。
この青色申告特別控除では、最大で65万円の控除を受けることができ、大きな節税効果を受けられるのです。
青色申告特別控除を受けるためには、事前に開業届、及び青色申告承認申請書を所轄の税務署に提出する必要があります。
ただし、事前に開業届を提出しなくてはいけない性質上、個人事業主や自営業、フリーランス、会社員で複業をしているような人が対象になります。
>>青色申告についてより詳しく知りたい方はこちらをご覧ください<<
特定支出控除とは何か
もう一つ、給与所得控除や所得控除とは別に存在する「特定支出控除」についてご紹介します。
この特定支出控除の対象は、給与所得のある人です。
給与所得控除は給与所得者の経費だと説明しましたが、実際に経費として使った金額が給与所得控除額を上回った時のためにあるのが、この特定支出控除です。
給与所得者が次のいずれかの特定支出をした場合、一年間で特定支出の額の合計額が、「その年中の給与所得控除額×1/2」を超えるときは、確定申告によりその超える部分の金額を給与所得控除後の所得金額から差し引くことができます。
- 一般の通勤者として通常必要であると認められる通勤のための支出(通勤費)
- 転勤に伴う転居のために通常必要であると認められる支出(転居費)
- 職務に直接必要な技術や知識を得ることを目的として研修を受けるための支出(研修費)
- 勤務する場所を離れて職務を遂行するために直接必要な旅行で給与の支払者により証明された通常必要な支出(職務上の旅費)
- 職務に直接必要な資格を取得するための支出(資格取得費)
※現在では弁護士、公認会計士、税理士などの資格取得費も特定支出の対象 - 単身赴任などの場合で、その者の勤務地又は居所と自宅の間の旅行のために通常必要な支出(帰宅旅費)
- 次に掲げる支出(その支出の額の合計額が65万円を超える場合には、65万円までの支出に限る)で、その支出がその者の職務の遂行に直接必要なものとして給与等の支払者より証明がされたもの (勤務必要経費)
(1)書籍、定期刊行物その他の図書で職務に関連するものを購入するための費用(図書費)
(2)制服、事務服、作業服その他の勤務場所において着用することが必要とされる衣服を購入するための費用(衣服費)
(3)交際費、接待費その他の費用で、給与等の支払者の得意先、仕入先その他職務上関係のある者に対する接待、供応、贈答その他これらに類する行為のための支出(交際費等)
注意したいのは、確定申告によりこれらを特定支出控除として適用するためには、特定支出に関する明細書、給与等の支払者の証明書、領収書等の添付が必要だという点です。
また、通勤費や転居費などは事前に会社から支給されるケースが多く、「その年中の給与所得控除額×1/2」というハードルを超えない、明細書や証明書などの適用に至るまでの条件が厳しいなどの理由からあまり実用されていない実態があります。
もし、特定支出控除の適用を考えているのであれば、領収書のような必要なものを常日頃から保管しておく癖をつけておきましょう。
所得控除はどうすれば適用できるのか
自分に該当する所得控除を見つけることができたら、次は適用をしなくてはなりません。
では、所得控除はどうすれば適用できるのでしょうか。一緒に確認していきましょう。
会社員の場合
会社員の場合は所得控除を適用する前に、給与所得控除を受けることができます。
この給与所得控除や基礎控除のような基本的な控除は、会社で行う年末調整で自動的に適用されます。
このとき保険に関しては、会社に「控除証明書」を提出する必要があります。
ただし、雑損控除・医療費控除・寄付金控除については、確定申告をしなければ適用されず、その恩恵を受けることはできません。
また、会社員で複業・副業を行っているとき、所得(パート・アルバイトの場合は収入)が20万円を超える場合は、別途で確定申告をする必要があるので注意しましょう。
会社員以外の場合
会社員ではない場合、会社で行う年末調整がありません。
そのため、自ら確定申告を行い、該当する所得控除を明記する必要があります。
だから、所得控除の知識があるとお得になると言われているのですね。
控除の適用を忘れた場合
場合によっては、控除の適用を忘れてしまったケースも考えられます。
この場合、会社員であるかないかを問わず、還付申告によって損した分を取り戻せるかもしれません。
不安な人は所轄の税務署に電話をしてみてはいかがでしょうか。
所得控除の計算方法
では、実際に所得からどのように所得控除が適用されて、課税所得が確定するのかをご紹介します。
もちろん、何の控除に該当し、適用されるかは人によって異なります。
収入が給与だけの場合は、給与所得から各控除額の合計を差し引けば課税所得額が求められます。
課税所得を求める式を文字で表すと以下のようになります。
各種所得の合計-各種所得控除の合計=課税所得
文字式だけでは理解しづらいと思うので今回は、以下の2つの例を用意しました。
【例①】個人事業主で事業所得が550万円、生命保険(2015年契約)料2万円、小規模企業共済などの掛金12万円、寄附金2万円、社会保険料35万円
式:550万円(事業所得)-(48万円(基礎控除)+2万円(生命保険料控除)+12万円(小規模企業共済掛金控除)+2万円(寄附金控除)+35万円(社会保険料控除))=451万円(課税所得)
【例②】会社員で給与所得が600万円、配偶者の年間のパート収入100万円、同居しているのは長女(19歳の大学生)、社会保険料45万円
式:600万円(給与所得)-(48万円(基礎控除)+38万円(配偶者控除)+63万円(扶養控除)+45万円(社会保険料控除))=406万円(課税所得)
このようになります。
計算自体は単純なので、ぜひこの機会にマスターしておきましょう!
年末調整の保険料控除申告書の書き方
最後に、年末調整の保険料控除申告書の記入方法についてご紹介します!
申告書を書くために、まず「給与所得者の保険料控除申告書」を入手します。
この申告書に生命保険、地震保険、社会保険、小規模企業共済などの保険控除の詳細を記入していきます。
また、生命保険、地震保険については控除できる金額に上限があるため、自分で記載しながら控除できる額を自ら計算する必要があります。
詳しくは「保険料控除申告書の書き方」に記載してあるのでご覧ください!
さいごに
今回は、控除とは何か、所得控除の種類、青色申告特別控除や税額控除との違い、どのように適用すれば良いか、控除の計算方法などをまとめてご紹介しました!いかがでしたか?
控除を知っていると自ずと節税に繋がるケースが多いので、この機会にぜひ頭に入れておきましょう!
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