政府が働き方改革の一環として「副業解禁」を推進したことにより、「副業解禁元年」となった2018年。
ベンチャー企業はもちろん、大手企業も続々と副業を解禁しています。
会社が副業解禁を検討しているけど、実際どうなの?複業OKな企業に転職したいけど、どうすればいいの?と疑問をお持ちの方に、複業OKな企業一覧や、副業解禁事例などご紹介いたします。
副業解禁ブームが始まったきっかけ
2017年11月に政府が働き方改革の一環で行った2つの施策があります。
1つ目は、「副業・兼業の促進に関するガイドライン」の公表。
2つ目は、「モデル就業規則」の改定です。
厚生労働省が示していたモデル就業規則から「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という規定が削除され、「労働者は勤務時間外において他の会社等の業務に従事することができる」と改定されました。
2つの施策により副業を希望する人々が増え、それに伴い従業員の副業を許可する企業の動きが加速したことが副業解禁ブームのきっかけとなっています。
副業に対する国や企業の考え方
副業に対する国や企業の考え方を時系列で追っていくと、以下のようにまとめられます。
2008年以前(リーマンショック前)
この頃は、就職した会社での仕事に全力を尽くすのが当たり前であるという意識が強く、そもそも副業を容認している企業もほとんどありませんでした。
2009年以降(リーマンショック後)
リーマンショックによる影響で、世界的に経済活動が停滞しました。
日本も例外ではなく、不況に陥った結果、多くの企業が給料やボーナスのカット、リストラなどの人件費削減を行いました。
これにより日産や花王などを中心に、生活を守るためであれば副業を容認する企業が増えたのです。
2016年以降(「働き方改革」以降)
政府による「働き方改革」が提唱され、その一環として積極的に副業を認めようという方針が打ち出されてからは、副業を認める企業が増えました。
また、社員自身も生活のためだけでなく、スキルアップや自己実現などを目的とした「複業」をする人が増えました。
2018年以降(「副業解禁」以降)
副業元年といわれる2018年以降は、厚生労働省が「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を公表し、「モデル就業規則」から副業禁止を削除しました。
これにより続々と副業を解禁する企業が増え、今後も増えていくと予想されています。
副業解禁の背景
そもそも、なぜ政府は副業解禁を推進しているのでしょうか?
政府としては副業・兼業をすることによって、自分が所属している一つの会社に留まることなく新たな発想で事業を起こし、日本の経済全体がより活性化することを目的としており、また、多様な働き方を求める人が増えたことも背景にあります。
もちろんそれだけが「副業解禁」に踏み切った理由ではありません。
終身雇用制度の破綻
これまでの日本企業は「終身雇用」を前提にしてきました。
しかし、時代の変化とともに消えていく職種の社員をクビにせず抱え続けることは、会社にとってリスクになりえます。
このように終身雇用制度は破綻しつつあり、収入が減少する分を複業で補填したり、退職後に不足するであろう蓄えを今のうちに複業で稼いでおいてほしいという政府の考えがあります。
人手不足の深刻化
まさに今、日本の労働市場は、深刻な人手不足に陥っています。
労働人口の減少は今後も続くと予想されており、人手は足りなくなる一方です。
一つの会社に縛り付けておく働き方は、人手不足を助長するだけ。
そこで副業を解禁すれば、複数の企業を掛け持ちして働くことができるため人手不足を緩和させることができるのでは、という政府の思惑もあるようです。
増税に向けた対策
現在の日本の財政は、かねてから厳しい状況にあり、この厳しい財政を再建するために今後も増税が予定されています。
税制改正や、増加する社会保険料などでサラリーマンの手取り額は目減りする一方です。
政府は「このままでは税収が不足するのでは?」と考えた結果、国民の収入が増加すれば税収が増えるだろうと考え、「副業解禁」に踏み切ったと言われています。
複業・副業に対する企業の意識
政府は副業解禁を推進していますが、実際に複業・副業に対する企業の意識はどのようなものなのでしょうか?
複業・副業の許可状況
リクルートキャリアが「兼業・副業に対する企業の意識調査」を2017年1月6日~1月27日の期間に行ったところ、兼業・副業を容認・推進している企業は全体の22.9%程度に留まりました。
しかしその後、パーソル総合研究所が「副業の実態・意識調査」を2018年10月26日~2018年10月30日の期間に行ったところ、兼業・副業を容認・推進している企業は50.0%にも増加していることが分かりました。
複業・副業が許可された時期
パーソル総合研究所の調査によると、企業が副業容認を始めた時期は3年以内が52%。そのうち1年以内が22.8%です。
厚生労働省がモデル就業規則の改定を行ったのは2018年1月。働き方改革の影響で、副業許可の動きが広まったのではないかと推察されています。
今後も複業・副業を許可する企業は年々増加していくのではないでしょうか。
複業・副業解禁に消極的な企業の理由
副業を許可する企業が増加している反面、いまだ副業を全面禁止している企業は50.0%。
そのうち、70.9%は今後も禁止を継続すると回答しています。
その理由とは一体何なのでしょう?
複業・副業禁止の理由
副業禁止意向の理由で最も多かったのが、「従業員の過重労働につながるため」が49.2%でした。
次いで「自社の業務に専念してもらいたいため」(47.0%)、「疲労による業務効率の低下が懸念されるため」(43.6%)と続きました。
実際に副業を禁止している企業の中では、「もともと時間外労働が他の業界に比べて長く、その上で副業となると、本業に支障をきたす可能性がある」「キャリアの形成や知識の習得などは別の方法でもできるため、自社の業務に専念してほしい」「社員の健康管理、職務専念義務、競業への機密情報漏えいリスクが心配」という声が上がっています。
複業・副業について企業の本音
企業側は「自社以外の企業と雇用契約を結ぶこと」を最も懸念しています。
業務委託契約であれば問題はありませんが、自社以外の企業でアルバイトや正社員などの雇用契約を結んだ場合、人事管理上、さまざまな問題が発生します。
労働基準法は1日8時間、1週40時間の法定労働時間を超えた労働に対し、「1.25倍」以上の割増賃金の支払いを義務付けており、本業と副業の労働時間を通算して8時間を超える場合も残業の対象になります。
こういった労働時間の管理を企業が厳しく徹底している中、本業と副業の時間管理が不透明となる可能性があります。
また、労働者側ももし過労等で健康を害した場合、どちらの業務が原因かの判断がつきにくくなり、労災が受けられない可能性もあります。
というのも、現行の労災保険の補償が受けられる過労死認定基準は月平均80時間を超えて働いていた事実が要件となります。
しかし、異なる企業の労働時間は合算されません。
それぞれの会社では法定時間内(残業時間ゼロ)なので、過労等で健康を害しても労災認定はされないのです。
>>複業・副業のデメリットについてより詳しく知りたい方はこちらをご覧ください<<
実際に複業・副業を許可した企業が感じた効果
副業・兼業促進の方針が政府から提示されたものの、法制度面での整備が不十分ではあることは否めないため、企業側も労働者側もまだまだリスクが多いことは事実です。
しかし、複業・副業を許可して効果を感じられた企業もいます。
前述したパーソル総合研究所の「副業の実態・意識調査」で、副業・兼業容認でどのような効果があったのかを調査した結果、「社員の収入補填」が63.5%。その他、「働き方改革の促進」(59.1%)や「社員の社外での人脈拡大」(52.2%)、「優秀な人材の定着」(50.9%)などといった、企業にとってもメリットとなる効果が見られています。
また、複業をしている人にとっても、「本業では得ることが出来ない新しい知見やスキル、経験を得ることができた」というスキルアップを実感した人が46.8%と、複業の効果を感じている人が多いことが分かります。
>>複業・副業のメリットについてより詳しく知りたい方はこちらをご覧ください<<
複業・副業したい人は約4割
前述したパーソル総合研究所の「副業の実態・意識調査」で、正社員で現在副業している人は10.9%。現在副業を行っていないが、今後副業したい人は41.0%と、副業したいと考えていない人(33.1%)を上回る結果となりました。
およそ4割の人が副業を検討しており、柔軟な働き方を求めているということが分かります。
企業にとっても、「柔軟な働き方ができる」「副業を容認している」というのは採用上のアドバンテージになるのではないでしょうか。
優秀な人材であればあるほど「新しい仕事に挑戦したい」「これまでの自分のスキルを活かしたい」というケースが多く見られます。
優秀な人材を採用できる上に、他社で得たノウハウや知識を自社に活かしてもらえるのであれば、企業にとっても個人にとっても、win-winの関係になれるのではないでしょうか。
複業・副業をするためには?
約4割もの人が複業をしたいと考えているようですが、複業を始めたら確定申告をする必要があったり、複業をする時間を確保したりと、やらなければならないことはたくさんあります。
とはいえ、複業を始められる環境なのであれば問題はありません。
複業をしたいと考えている人の中には、複業・副業を全面禁止している企業に勤めている人もいるのではないでしょうか。
いくら副業禁止が緩和されるようになってきたとはいえ、いまだ複業・副業を全面禁止している企業は50.0%もあります。
そもそも一体どこからが副業と考えればいいのでしょうか。
どこからが副業になる?
副業というのは一般的には「本業とは別に収入を得る仕事」と言われています。
しかし、法律で副業に関して明確な定義があるわけではなく、どこから副業になるかは会社によって異なります。
副業を禁止している企業の中には、「セミナー講師として講師報酬をもらうのは問題ない」「雑誌の執筆や、有償のボランティアは問題ない」といったケースもあります。
本業に影響しないスポット的な仕事の依頼については、幅広く許容しているようです。
逆を言えば、本業に影響があるような副業は、副業禁止規定に抵触する恐れがあるということになります。
本業に影響があるような副業の一例を挙げると、以下のようなものがあります。
営利目的でのアフィリエイト
アフィリエイトは、最初から放置しておけば収入を得られるというわけではありません。
仕組み作りをしたり、継続してブログを書き続けたりしなければなりません。それはある程度の時間と労力を要します。
その段階で本業に支障をきたすようであれば、副業に含まれると考えられています。
しかし、趣味程度でブログを書いて営利目的でない(たまたま広告収入が入った)場合は、本業に影響があるとは言えないため副業に含まれないでしょう。
クラウドソーシング
ライターやWebデザインの作成、ソフトウェア開発など、さまざまな業務依頼があるクラウドソーシングですが、自身の趣味や知識を生かして本業を終えた時間で会社勤務に支障のない範囲であれば、問題はありません。
ただし、自社の競合会社に競合するソフトウェアを開発することや、継続的に仕事を受注した場合は、本業に影響が出る可能性があるので副業に該当します。
ネットを使った物品の売買
仕入れたものを継続して売る場合は、副業に該当します。
しかし、フリマアプリやネットオークションで不用品を処分するためのものであれば、継続性はないので問題ありません。
ハンドメイド雑貨の売買
本業を終えた時間で趣味程度であれば問題はありません。
しかし、長時間に渡る制作や、販促活動で忙しくなった場合など、本業に影響が出てしまうものに関しては副業禁止規定に抵触する可能性があります。
なお、株式投資やFX、不動産投資のような不労所得型の副業に関しては、一般的には投資のために使う時間も少なく、また体力の消耗も少ないため副業には該当しないと考えられています。
ただし、不動産投資の場合、ただの投資なら問題はありませんが、投資先アパートの管理業務を自ら行うと副業に該当します。
一般的には「継続しないスポット的な仕事」や「不労所得の仕事」であれば、副業には該当しないと考えられているようです。
そうはいっても会社によって副業規定はさまざまなので、「副業を禁止されているけど、副業がしたい」という人は人事部に確認することをおすすめします。
そこでどういった業務であれば副業規定に抵触するのか、逆にどういった業務であれば抵触しないのかということを確認してみましょう。
複業・副業によって会社とトラブルになる場合も
副業規定の確認を怠った場合、会社とトラブルになる可能性もあります。
届出や許可を怠り隠れて副業をしていた場合や、自社に競合する業務や反社会的な業務を行っていた場合は、バレた際に懲戒処分を受けてしまう恐れがあります。
最悪の場合、懲戒解雇を含む重い処分が下されることになるかもしれません。
また、本業の勤務時間中に副業を行うことや、長時間に及んで副業をしていたことによって、本業に影響が出るようなことがあれば業務専念義務違反で懲戒処分を受けることもあります。
複業・副業を容認している企業であっても本業に影響があるようであれば、許可を取り消されてしまう可能性もあるので注意しましょう。
複業・副業解禁企業へ就職・転職するには
確定申告やマイナンバーによる副業バレを恐れた優秀な人材が他社に流出する可能性があるため、今後さらに複業・副業を解禁していく企業も増えていくのではないでしょうか。
それでもなお、複業・副業を禁止している企業で複業をしたいという人は、会社とトラブルになる前に副業解禁企業に転職するのも手です。
そうはいっても、ただ複業・副業を解禁している企業に転職をすればいいというわけでもありません。
実際に全社を挙げて複業・副業を推奨している企業もあれば、そうでない企業もあります。
副業を容認しているはずなのに副業のための休暇も途中抜けも認められず、副業のフォロー体制が全くないという企業も珍しくはありません。
副業解禁企業への就職・転職時にまず確認すべきことは、「副業に対するフォロー体制」「副業に対する意向」「副業者の割合」の3つです。
特に「副業者の割合」を見るといいでしょう。
採用のアドバンテージのためだけに複業・副業を容認している企業もあり、そういった企業は複業している社員が全くいないケースも多々あります。
「いざ入社してから複業しようと思ったら、実は会社が複業に対して前向きじゃなかった…」なんてことにならないように、事前に確認することをおすすめします。
もしくは、働き方改革!複業・副業を解禁している企業一覧をご参考ください。
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