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複業・副業兼業 2019.11.20

兼業とは?副業との違いやそのメリットを企業と労働者別に知ろう

近年、「兼業」という言葉が当たり前に使われるようになりました。

働き方改革が推し進められ、副業や兼業が推進される中で、今後さらにこの「兼業」を行う方が増えてくると考えられます。

今回は、そのような兼業の意味や副業との違い、実際に兼業を行った場合のメリット、また企業が兼業を容認することのメリット、デメリットなどについてご紹介します。

兼業とは?その実態とは

まずは兼業の意味や、兼業の現状、そして今なぜ注目されているのかについてご紹介します。

兼業の定義は?

兼業には、実は法的な定義は存在しません。

しかし一般的に、兼業とは「本業のほかに他の業務を兼ね営むこと」とされています。例に兼業農家が挙げられます。

この場合、農家が本業である場合と、農家が本業ではなく収入においてサブ的な役割を担っている場合が考えられますが、いずれも兼業農家と称されます。

また、複数の仕事がいずれも本業だと捉える考え方もあります。

このようにどちらを本業であるかを問わず、2つ以上の仕事を掛け持ちしているのであればそれは兼業だと言えます。また、同様の意味で二重就職と呼ぶこともあります。

兼業の現状は?

2018年6月に働き方改革法案が成立し、より自由な働き方が求められる時代になりつつあります。

そのような背景から、改めて兼業に注目が集まっています。

2002年から2017年までは兼業者の人数は横ばいだったものの、株式会社リクルートキャリアが2019年に発表した、兼業や副業を認める企業に勤める労働者2000人を対象にした「兼業・副業に対する個人の意識調査」では、過去に兼業をしていた人と現在兼業をしている人の合計が全体の4割に達しています。

一方、企業側を見てみると、2017年に企業に対して行った「兼業・副業に対する企業の意識調査」で、兼業や副業を容認している企業は全体の約2割程度であったのに対し、同意識調査の2018年の結果を見ると、兼業や副業を容認している企業は全体の約3割まで増加しています。

その後の2019年のパーソル総合研究所の調査では、約半数の企業が兼業や副業を容認している結果となっています。

この推移を見ても、近年の兼業の注目度が分かります。

しかし、その一方で、兼業や副業を禁止している企業は全体の約半数を占めています。

しかも、その7割程度が今後も兼業を禁止する意向を示していることも分かっています。

兼業を企業が禁止する理由

では、なぜ企業は兼業や副業を禁止する傾向にあるのでしょうか。

代表的な理由をご紹介します。

社員の長時間労働や過重労働を助長するため

「兼業を禁止にする理由」の中で最も多かった理由が「社員の長時間労働・過重労働を助長する」でした。

兼業は、前述したように2つ以上の仕事を掛け持ちすることを意味します。

そのため必然的に個人の負担は増えることになります。

企業は、疲労の蓄積による社員への安全配慮義務違反、健康配慮義務違反とならないように注意すべきです。

このハードルをクリアにするためには、ただ全面的に容認するのではなく、「従業員から副業・兼業として労働した時間を明確に申告してもらう」や、「週何時間までの副業・兼業であれば容認する」などといった条件を設け、過重労働になっていないかを確認する必要があるでしょう。

労働時間の管理や把握が困難なため

確かに使用者は個人の労働時間を管理、把握できればリスク回避に繋がりますが、実際に適切な管理方法で個人の労働時間を把握し続けることはハードルの高いことかもしれません。

仮に、使用者が自社での労働時間を正確に管理することができたとしても、他社での労働時間も把握せねばならず、そういった労働時間の管理や把握の困難さを懸念する企業も多く存在します。

本業への影響を懸念しているため

社員が労働時間や負担の増加によって、今までのパフォーマンスを発揮できなくなると、会社にとっては痛手となります。

こうしたパフォーマンスは定量的に把握しづらいため、企業としては予防的な傾向になりやすいのではないかと考えられます。

情報の漏洩の危惧

自社の機密事項が他社に漏洩しかねないという懸念から、兼業や副業を禁止している企業も多くあります。

社員が意図的に情報を漏洩する悪質なケースのほかに、普段の会話の中で意図せず話してしまうケースもあります。

兼業者としてはこういった情報の漏洩に関しては一層気を引き締めることが必要です。

人材流出の危惧

仕事を掛け持ちすることが可能となれば、同時に比較することも可能になります。

比較した結果、兼業先の会社の方が良いということになれば、元いた会社を辞められかねません。

例えば、看護師では2つの職場に同時に非正規社員として所属し、自分に合ったほうの職場に正規社員として更新し、もう一方を短期間で辞めるケースもあります。

このような人材流出の観点から禁止する企業も存在します。

労災保険の問題

労災保険とは、正社員やパート、アルバイトなどの雇用形態に関係なく、雇用されている人が仕事中や通勤途中に起きた出来事によって生じたケガや病気などに保険給付を行う制度のことを言います。

仕事中であった場合は、通常はその勤務先が労災の手続きを行いますが、過重労働が原因による死や過労自殺であった場合、どちらの会社が責任をとるかが問題となり、判断が容易ではなくなるのです。

こういった問題を回避するために兼業を禁止する企業も存在します。

どんな人材が来るか分からず、企業秩序が乱れることを危惧するため

これは中小企業に多く見られる理由の一つでした。

大企業ほど多くの人材がいるわけではないため、このような企業秩序という点を特に懸念視する傾向にあるのでしょう。

そのため今後は、企業と兼業希望者の精度の高いマッチングが求められると考えられます。

では、今なぜ兼業が注目されているのか?

上記のように、企業が労働者の兼業を懸念する理由は少なからずある中で、今なぜ兼業が注目されているのでしょうか。

以下、大きな理由の3つをご紹介します。

政府の働き方改革による取り組み

平成29年3月に政府が発表した「働き方改革実行計画」の第5章の「柔軟な働き方がしやすい環境整備」という項目で今後の方針や施策などが記載されています。主にテレワークの推進や、兼業・副業の推進に向けたガイドラインの策定があります。

また、兼業や副業から起業を促すことで、経済の活性化や雇用創出などの付随的な効果も狙っているようです。

詳しくは中小企業庁がまとめた「兼業・副業を通じた創業・新事業創出に関する調査事業研究会提言」と「兼業・副業を通じた創業・新事業創出事例集」に記載してあります。

これに加えて、厚生労働省は同年10月から12月にかけて「柔軟な働き方に関する検討会」を設けて、現状の課題や今後の展望について検討したようです。

そのほかに、平成30年1月に政府が定め公表した「副業・兼業の促進に関するガイドライン」と「モデル就業規則」があります。

「副業・兼業の促進に関するガイドライン」には、副業や兼業は原則認めるべきであることや労使のコミュニケーションが重要であること、現行の労働法においての留意点などが記載されています。

厚生労働省はこのガイドラインの詳しい解説をするパンフレットQ&A副業・兼業を行っている方の事例も公表しています。

また、2019年4月16日に行われた「中途採用・経験者採用協議」では、大企業に対して「もっと兼業解禁を推進させていくべきだ」とベンチャー企業や中小企業の経営者から意見が出されたようで、安倍総理もその方向性を支持しました。

自由な働き方を求める労働者の増加

労働者側も、以前よりフレックスタイムやテレワークなどの自由な働き方を求める声も多くなってきています。

これには、人口減少によって企業が労働者に今まで以上の効率性を求めるようになった背景もあると考えられます。

決まった時間に出社するような働き方が少しずつ変わりづつあります。

人手不足が深刻化する企業の増加

人口減少に伴い人手不足に陥る企業も少なくないようです。

そこで、政府は「働き方改革実行計画」によって、兼業による創業・新事業創出や人材確保につながった企業の事例や、地域ブロックごとにモデル企業を選定して支援する計画などを公表しています。

このように政府は、兼業や副業を推進させようとする働きかけにより、企業の人手不足という問題の解決を試みています。

兼業に似ている言葉

兼業に似ている言葉に副業やダブルワークなどがあります。

今回は、それらと兼業の違いについてご紹介します。

副業

一般的には「収入を目的とする本業以外の仕事のこと」を言います。

兼業と同様に、副業にも法的に定義が定められているわけではありません。

本業の収入に少しプラスになるようなサブ的な仕事のイメージです。

雇用契約はないことが多く、比較的雇用契約が存在する兼業とは異なります。

ただ、「副業・兼業」と一括にされるケースも多く、あまり区別されないことも多いようです。

>>副業についてより詳しく知りたい方はこちらをご覧ください<<

複業

複業は漢字の通り「複数の仕事をもつこと」を言います。

特徴としては全てを本業として考えることです。サブ的な意味合いをもつ副業とはその点で大きく異なります。

兼業とほとんど同様の意味ですが、兼業は事業をもつことを基本とし、複業よりもやや本格的な意味合いを持ちます。

>>複業についてより詳しく知りたい方はこちらをご覧ください<<

ダブルワーク

ダブルワークは2つの仕事を掛け持ちすることを言い、一番似ている言葉は兼業に当たります。

しかし、ダブルワークの場合は非正規雇用の場合が多く、基本的にはアルバイトを掛け持ちしている場合に用いられます。

パラレルキャリア

和訳でパラレル=並行、キャリア=職業・生き方と訳せるように、パラレルキャリアとは「本業を持ちつつ、もうひとつのキャリアを築くこと」を言います。

しかし、パラレルキャリアは報酬を得ることを目的とはしておらず、ビジネスに限定しない自己実現やボランティアなども含まれます。

>>パラレルキャリアについてより詳しく知りたい方はこちらをご覧ください<<

兼業のメリット

次に、兼業を行った場合や容認した場合のメリットを労働者と企業別にご紹介します。

労働者側のメリット

まずは、兼業した際に得られる労働者側のメリットです。

収入が増加する

副業と同様に仕事が1つから複数に増えるため、自然と収入が増加する可能性が高いと言えます。

兼業では一般の企業では数年かかるであろう月収5万円程度の増加であれば、すぐに増収が見込めます。

収入が増えれば自然と生活の質の向上にも繋がりますね!

スキルアップできる

兼業することで、一つの仕事では得られなかった知見や、経験を得られる可能性が大いにあります。

「今の部署では学べないあのスキルを学びたい!」という強い目的意識があれば、さらにその可能性は高くなるでしょう。

一つの仕事では得られなかった充実感を得られる

仕事をこなしていく中で、自分のやりたい業務に携われないことも多々あります。

その中で、目的意識をもって兼業することで、自分の携わりたい分野の仕事をこなすことができ、今まで以上の充実感を得られるでしょう。

企業側のメリット

兼業を容認し、社員が兼業をするようになると企業にとってはどんなメリットがあるでしょう。

労働者のスキル向上

兼業を容認することで、労働者は自社内で経験できること以外の仕事を外で経験することができます。

それによってスキルが向上し、自社に還元してもらうことで今まで以上の成果を出してもらうことが期待できます。

兼業を容認したことで、本業でのやり方に変化が起きたという人も多くいるそうです。

労働者の社外人脈の拡大

今まで、社内の人としか関わりのなかった人も兼業をこなし社外で人脈を広げることに成功すれば、これまで以上の成果を残してもらうことが期待できます。

また、そういった様々な人と関わり価値観を融合させることで、今までとは一味違う新規事業の創出につながるかもしれません。

労働者の定着化

例えば、もし社員が実家の農家を手伝うことになったとき、本業の会社が兼業禁止だった場合、辞めざるを得ません。

しかし、兼業が容認されていた場合、その人は社内に留まることができます。

こういった状況下でなくても、一つの企業に縛られたくない人材や、複数の仕事をこなしていきたい優秀な人材を確保することにも繋がります。

また、社員がやりがいをより感じやすくなり、モチベーションを保持しやすくなる点も定着化を促進させる上で重要となりそうです。

働き方改革の促進

既に述べたように、労働者も今まで以上に自由な働き方を求める時代になりつつあります。

そういった中で、いかに企業が働き方改革を推進させているかも企業を選ぶ上で欠かせない要素になっています。

特に、今は労働者人口の減少により企業の労働力不足が課題となっており、こういった取り組みの重要性も高まりつつあります。

兼業のデメリット

続いて、兼業を行った場合や容認した場合のデメリットを労働者と企業別にご紹介します。

労働者側のデメリット

まずは、兼業した際に考えられる労働者側のデメリットです。

負担が増える

今までの仕事に加えて、別の仕事が増えることになるので必然的に負担は増加します。

仕事に関しての負担は、今までの仕事と兼業している仕事との相関性によっても増減します。相関性が低いのであれば、慣れない仕事である可能性が高く負担も増えるでしょう。

少しでも本来の仕事の業務効率が落ちてきたと感じた場合は生活習慣や仕事量を見直したほうが良いでしょう。

また、企業に属するのであれば、その分の責任も重くなります。

解雇の危険性がある

法律では、就業時間以外の時間は個人の自由に使って良いとされていますが、就業時間外の労働は会社の就業規則によって禁止されている場合があります。

通常、就業規則で禁止されている場合でも催告なしでの兼業による解雇は法律上原則違法ですが、本業に著しく影響が出ている場合や、一方の会社にとって損益となる兼業を行っていた場合は解雇が有効とされるケースもあります。

企業側のデメリット

兼業を容認し、社員が兼業をするようになると企業にとってはどんなデメリットがあるでしょう。

人材の流出の可能性がある

メリットにある労働者の定着化と相反しますが、比較して兼業している他社に大きな魅力を感じるのであれば、他社に移ってしまう可能性も0ではありません。

しかし、メリットに書いてあるケースがあることも事実です。

そのため、規制を施すよりも自社で働くことのメリットを増幅させ、社員に認識させることが効果的であると考えられます。

情報漏洩の危険性がある

兼業している社員がどこかでうっかり口を滑らせてしまう可能性も0ではありません。

前述したように、USBを用いて意図的に情報漏洩させるような悪質なケースの他に、意図的ではなく口を滑らせてしまうケースもあります。

兼業するであろう社員には、事前に情報漏洩の危険性を認知させておくことが重要です。

業務効率低下の可能性がある

就業中に居眠りをしている、作業スピードが落ちるなどの分かりやすいケースであればいいですが、定量的にわかりづらいのがこの業務効率の低下の有無です。

過去と比較して業務効率に明らかに落ちたことが確認できた場合は注意が必要かもしれません。

兼業スタイルの代表的な例

「兼業ってみんないつやってるんだろう?」

そんな疑問を持ったあなたに3つの代表的な兼業スタイルの例をご紹介します。

週末のみの兼業

本業と同じ日に兼業をしないため、休養時間がある程度確保しやすいことが特徴です。

イベントスタッフや軽作業スタッフなどの日雇いバイトであればある程度稼ぐことができるでしょう。

ただ、注意が必要なのは、あまり週末に兼業を詰め込みすぎると休みの日がなくなってしまう点です。

本業の仕事が終わったあとの兼業

本業の仕事が終わった後に兼業を行うことで、週末にしっかり休養時間を確保できます。

しかし、1日の負担が大きくなりやすく、本業である仕事に影響が出てしまう可能性もあります。

そのため、1日の計画をスケジュール化しておくことが重要です。

体力にあまり自信がない人は、このスタイルが合うかどうかしっかり見定めましょう。

その他の空いた時間での兼業

移動時間や昼休憩などのちょっとした時間に兼業をこなしていくスタイルです。

そのため、少しの時間を用いて働くことができるアフィリエイトサイトが代表的な例として挙げられます。

原則禁止されている兼業

兼業に興味があるそこのあなた、やってはならない兼業があることをご存知ですか?

以下、通常禁止とされている兼業を3つご紹介します。

既に勤めている会社の利益を損なう可能性のある兼業

大きく分けて2つの例が考えられます。

まず、1つ目が既に所属している会社の競合他社に勤めるケースです。

2つ目が、既に所属している会社の利益を損なう可能性のあるビジネスを始めるケースです。

このような会社の利益と相反するような行為は就業規則において禁止されている場合がほとんどです。

最悪の場合、懲戒処分が下されるだけでなく、損害賠償を請求される可能性があります。

絶対に行わないようにしましょう。

会社の信用を失いかねない兼業

具体的な例としては、違法である振り込め詐欺やマルチ商法、また一般的にあまりいいイメージを持たれないであろう風俗業や水商売などが挙げられます。

こういった兼業を取引先に知られてしまった場合、本業に支障が出る可能性があるため行わない方がよいというわけです。

また、「楽して稼げる!」といったインターネット広告を目にしたことがある人もいるのではないでしょうか?

このような謳い文句で出している求人広告も悪徳な場合が多く要注意です。結果として、会社の利益を損なうことも考えられるため懲戒処分がなされるケースも十分に考えられます。

既に勤めている会社のパフォーマンスが落ちかねない兼業

労働者は給与を受け取っている以上、それに見合う労務を提供する義務があります。

休日に行う兼業や深夜業務を伴う兼業を連日行った結果、本業である仕事のパフォーマンスが落ちてしまっては元も子もありません。

この場合、既に勤めている企業はその兼業を辞めさせることができます。

これに応じなかった場合、懲戒処分させることもできるため、労働者はこのような兼業を行うべきではないと言えるでしょう。

兼業に関する注意点

では、実際に兼業を行う場合や兼業を容認する場合はどんな注意が必要なのでしょうか。

具体的な注意点を労働者と企業別の視点でご紹介します。

兼業を行う上での労働者側の注意点

まずは、本業とは別に兼業を行う場合に、労働者が気をつけるべき点です。

自社の就業規則がどうなっているかを確認しておく

兼業が禁止されている会社、許容されている会社問わず、自社の就業規則は確認しておくべきでしょう。

兼業する場合の手続きや条件などの規定がある場合はそれに従うべきです。

リスクのある兼業は避ける

先程、原則禁止されている兼業を3つご紹介しましたが、懲戒処分など本業に何らかの影響が出る可能性のある兼業は行うべきではありません。

スキルの向上や給与の増加など本来の目的意識を忘れず、本末転倒にならないように常に注意する必要があります。

所得税や住民税の負担は同じ

勘違いされやすいのですが、所得税や住民税は働き方を問わず同じです。

例えば1つの会社で年収600万円と、2つの会社の収入を合わせて年収600万円では納める税金は同じになります。

ただ社会保険料については、本業の収入に比例した額を納めることになるので、やり方を工夫すれば兼業先で社会保険料を支払わなくていいことになります。もちろん兼業の勤め先で社会保険料の支払いの義務がある場合は除きます。

社会保険(健康保険と厚生年金)、雇用保険においての注意点

加入要件を満たしている複数の企業で働いている場合、いずれの企業でも社会保険に加入しなくてはならず、その場合「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届」を年金事務所に提出する必要があります。

また、雇用保険に関しては「主たる賃金」の企業に加入と定められています。

>>社会保険についてより詳しく知りたい方はこちらをご覧ください<<

兼業を容認する上での企業側の注意点

次に、兼業を容認するときに企業が注意すべき点をご紹介します。

条件付きの兼業許容がいいかも?

パーソル総合研究所の調査によると、全面的な兼業許可ではなく条件付きの兼業許容のほうが兼業者がメリットをより感じやすいという結果が出ています。

また、本業である企業がどれだけ労働者の兼業をフォローできるかどうかも労働者が兼業で感じる満足度を高める上で重要です。

就業規則を再確認、必要があれば変更する

リクルートキャリアが2018年に行った「兼業・副業に対する企業の意識調査」では兼業を容認・推進している企業のうち約4分の1の企業が、兼業に関する規定自体を設けていないと回答しています。実際に、規定を設けなくてはいけない法律は存在しません。

しかし、企業が兼業を禁止する理由でも述べたように、意外と兼業に関する労働者と企業の紛争は多いのです。

そのため、改めて会社として兼業に関する規定を設け、社員全員に周知されておくことが未然に紛争を防ぐことに繋がると言えます。

労働時間の管理

兼業した場合に、よく問題となるのが労働時間超過に伴う割増賃金の支払い義務です。

例えば、A社で8時間働いたあとにB社で2時間働いた場合、あとで働いたB社に割増賃金の支払い義務が発生するのでしょうか。

ただ、たった2時間しか働いていないB社にその義務が発生するのは少し酷のようにも見えます。

しかし、割増賃金の支払い義務はあとに労働契約を締結した会社に生じます。

なぜなら、あとに労働契約を結んだ企業は、その人が兼業によって割増賃金が発生する可能性を加味した上で契約を交わすことが可能であるからです。

しかし、この考え方はあくまで現行法に基づいた考え方で、兼業・副業が活発になってきた現在の労働情勢を反映しておりません。兼業・副業促進のために、より一層の労働法の規制緩和が求められてます。 

36(さぶろく)協定について

36協定について聞いたことがない人もいるのではないでしょうか。

36協定とは、労働者の労働時間が1日8時間、1週間で40時間という法定労働時間を超える場合、企業が36協定届を労働基準監督署に届けなくてはならないというものです。

今まで、労使間(労働者と企業の間)で合意があれば無制限に残業できてしまっていたのが、これにより法的に規制されるようになりました。

企業の観点から言えば、本業と副業の通算労働時間が8時間を超えるのであれば、36協定届の申請を要するため徹底した労働時間管理が必要となります。

しかし、実務上多少グレーになりつつあります。

なぜなら、本業である会社と兼業先の会社の双方が労働時間を正確に把握することは困難であるからです。

ただ、法律で定められている以上、遵守すべきと言えるでしょう。

兼業がバレてしまったとき

会社側に無許可で兼業をしていてそれがバレてしまった時はどうすればいいのでしょうか。

実際の事例を元に対処方法をご紹介します。

法律的観点において

公務員については原則は兼業禁止ですが、国立大学法人や民間企業については兼業を全面的に禁止してはならないとしています。

ただ、実際は、既に述べたように半数以上の企業が兼業を「就業規則」で禁止しています。

また、「国家公務員の兼業について」で国家公務員法103条104条に定められているように内閣総理大臣及びその職員の所轄庁の長の許可がないと兼業できないとされています。

しかし、実際に企業に兼業がバレてしまったときに必ず懲戒処分を受けるとは限りません。

本業への影響度などを加味して個別具体的にその懲戒処分が妥当であるかを判断します。

実際の事例

では、実際に2つの事例をご紹介します。

「本業への影響性の程度」などで判決が変わることに注目してみてください。

小川建設事件

この事件では、まず民間企業に勤める従業員Xが、Y社で午前8時45分から午後5時15分まで働いた後に、別の企業で午後6時から午前0時までの6時間働きました。その後、Y社にその事実が発覚し、Xが二重就職を懲戒事由として解雇処分されたことについて不服を申し立て解雇無効を求めて起訴した事件です。

この事件での争点は本業(Y社)への影響性でした。

裁判所は、Xにとって午後5時15分以降の時間は個人の自由な時間であることを前提とした上で、その時間での休養は次の日の労働をなす上で基礎的な条件とし、Y社が興味関心を抱くことは当然であるとしました。

その上で、深夜にまで及ぶ労働はアルバイトの域を超え、次の日の労働に影響を及ぼすものと解釈し、解雇無効の主張を却下しました。

十和田運輸事件

この事件は、運輸会社であるY社の従業員であるXらが、運輸先の店舗より家電製品の値下げを受けて有限会社Bからリサイクル部の搬入の対価を受けていたこと、それを勤務時間にY社の車を使用して行っていたことの2つを理由に解雇処分にしたことで、Xらが解雇無効を主張して起訴した事件です。

これについて、当時Y社には就業規則が存在しなかったこと、また頻度としても年数回で本業に影響するとは言いかねる程度であることを理由に裁判所は主張を認め、Xらの解雇処分を無効としました。

さいごに

今回は、兼業の意味やメリット、注意点などについて労働者と企業別でご紹介しました。いかがだったでしょうか。

聞き慣れつつある「兼業」という言葉ですが、36協定など普段生活しているだけでは触れることがない情報もあったと思います。

現在では、手を抜くなどのマイナスのイメージのある兼業ですが、今後企業の受け入れ体制などがさらに進むことで、より兼業者が多くなっていくのではないかと考えられます。

実際に兼業をする場合には、ぜひ会社の就業規則や兼業先のことを十分に調べてから、自分にとっても会社にとってもメリットの多い兼業をできるようにしましょう。

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