最近、リモートワーク(テレワーク)が広まるのと同時に、在宅勤務、在宅ワーカーなど家で仕事をする働き方に注目が集まっていますね。
そこで今回は、在宅勤務の働き方について解説していきます!
在宅勤務とは?
在宅勤務とは、企業に雇用されながらもICT(情報通信技術)を活用して自宅で就業する勤務形態を言います。
また、在宅勤務は「リモートワーク(テレワーク)」に含まれます。
リモートワーク(テレワーク)は、雇用型と自営型の2種類に分けられており、在宅勤務は雇用型に含まれる働き方の一つです。
>>リモートワークについてより詳しく知りたい方はこちらをご覧ください<<
次に、在宅勤務は就業頻度によって「常時型在宅勤務」と「随時型在宅勤務」の2つに区分されます。
厚生労働省の出している「在宅勤務での 適正な労働時間管理の手引」によると、下記のように定義されています。
- 常時型在宅勤務:比較的長期間にわたり、ほとんどの労働日を在宅勤務に あてる形態
- 随時型在宅勤務:週に1~2回、月に数回、あるいは午前中だけというように、 2 全労働日のうち、部分的に在宅勤務にあてる形態
在宅ワークと在宅勤務の違い
一般的に在宅ワークとは、企業と雇用関係を持たずに個人事業主として、自宅で仕事を行う働き方を指します。
そのため、企業と雇用関係があることが前提とされている「在宅勤務」とは明確な違いがあります。
しかし雇用・非雇用問わず、自宅に限らないで好きな場所で働くことを「在宅ワーク」と呼ぶ場合もあるため、在宅勤務と在宅ワークに違いはないとも言われています。
>>在宅ワークの種類についてより詳しく知りたい方はこちらをご覧ください<<
在宅勤務のメリット
それでは、在宅勤務のメリットについて紹介していきます。
企業側と個人側で分けて説明していきます。
在宅勤務のメリット(企業側)
在宅勤務制度の導入には、たくさんのメリットがあります。見ていきましょう。
仕事の生産性の向上
ルーティーンで形式的に行われている意味の薄い会議や、オフィスで働いていると避けられない周囲の雑音などがなくなるため、業務に集中できて作業効率が上がります。付随して生産性も向上するでしょう。
様々なコストの削減
社員が在宅勤務をすることで、交通費はもちろん、光熱費をはじめとしたオフィス管理費を削減することができます。
ワークライフバランスの向上
通勤をなくすことで社員の可処分時間が増えるため、より包括的に社員のワークライフバランスを支えることができます。
優秀な人材の確保
在宅勤務であれば出社の必要がなくなるので、家庭の事情などで都心部に通勤することが困難な地方にいる優秀な人材や、障がいをもった方を採用することができます。
企業のイメージアップ
「在宅勤務を実施している企業」ということ自体が企業の評価につながります。
企業の社会的責任(CSR)が問われる昨今では、働き方の多様性を認めているかどうかも重要視されるのです。
育休・介護休の社員の早期復帰
育休や介護による休暇を取得している社員が、思ったより早く育児や介護の必要がなくなり、残りの休暇期間も勤務したくなったようなケースにも在宅勤務は有効です。
在宅勤務の制度があれば、もともと休暇だった期間に無理やり休まなくとも、自宅で即日働けるので、スムーズに職場復帰することができます。
在宅勤務のメリット(個人側)
在宅勤務は、当然企業だけではなく個人にとってもメリットがあります。
容易に想像がつくメリットもありますが、改めて整理してみましょう。
通勤の負担からの解放
在宅で働けるため通勤の必要がなく、満員電車によるストレスや疲労がないことから、仕事のパフォーマンスを低下させる心配もありません。
それだけでなく、服選びや髭剃り、化粧などの身支度も最低限で問題ないため、余裕を持って業務開始できます。
居住の選択肢の拡大
在宅勤務であれば、無理に勤務地からアクセスのいい場所に住む必要がないので、居住地の選択肢が広がります。
家族とのコミュニケーション増加
家族との団らんに時間を割けることも魅力の一つです。オフィス通いだと外食や飲み会で家族と夕食を食べる機会も減りますが、在宅勤務なら毎日一緒に食べることも可能です。
自由時間の増加
企業のメリットでも触れましたが、個人レベルで見ても、介護や育児をする人にとって在宅勤務はメリットが大きく、個人で自由に使える時間が増えて働きやすくなります。
在宅勤務のデメリット
制度としては知名度もあり、様々な企業で導入されている在宅勤務ですが、制度が形骸化して活用されず、普及しきっていないという側面もあります。デメリットをあげる形で、その理由に迫ります。
在宅勤務のデメリット(企業側)
まずは、企業側におけるデメリットから紹介していきましょう。
セキュリティの管理コスト
セキュリティをしっかり管理するためには、仮想プライベートネットワークやクラウド型セキュリティ管理ツールなどを使用して、社外に情報が漏洩しないようにする必要があります。
IT企業や新興企業、大企業であればすでにセキュリティシステムを導入していることが多いですが、設立年数の長い中小企業は導入していないことがあるため、導入コストがかかります。
勤怠管理の困難
勤怠については、上司が部下と同じ空間にいないため出勤・退勤の正確なタイミングを把握することが難しいです。
基本的に信頼ベースで申告させることになりますが、1日何回報告するか、どのような内容を報告に入れるかなどを義務づけたりと、在宅勤務制度を整える段階で勤怠について定めておけばトラブル回避につながります。
方針変更に対する抵抗感
在宅勤務は、主に役職者が消極的であり、認めようとしない一面もあります。
役職者は部下がサボると思ってはいないものの、自分の目に届く範囲にいないことが怖いのです。
役職者自身が若い頃、対面で「報・連・相」のコミュニケーションを重視した指導をされてきたことも一因でしょう。
在宅勤務制度を導入するにあたっては、経営陣が役職者に対して管理方法のモデルを紹介したり、オンラインでも信頼関係を築けるようなフォローまでしておく必要があります。
緊急時の対応の遅れ
在宅勤務をしていると対面でのコミュニケーションができなくなってしまうため、緊急時の対応はどうしても遅れてしまうことがあります。
対応が遅れて大事になってしまわないように、事前に連絡体制の構築をしておきましょう。
労災認定の困難
テレワークでは労災の認定が困難です。例えば家の近くのカフェでリモートワークをしていて、そのカフェに向かう途中で交通事故にあった場合、その怪我を労災として認定できるかは非常に難しい問題です。
上司に「午後から駅前のカフェで仕事をします」と連絡をしていれば問題はないのですが、伝えていない場合、本当に業務のためにカフェに向かっていたのかどうかがわからないため事実確認ができません。
リモートワークと同じように、在宅勤務者の作業状況含め、作業場所をしっかり把握していないと、社員を不慮の事故や怪我などから保護する配慮ができなくなってしまいます。
社員間コミュニケーションの低下
社内で面と向かって対話をする機会がなくなるので、社員間でのコミュニケーションが少なくなってしまいます。コミュニケーションが過度に低下すると、会社への忠誠心が低下したり離職の可能性が高まります。
チャットツールで雑談専用のルームを用意したり、定期的に飲み会を開催したりと、対策を講じる必要がありますね。
在宅勤務のデメリット(個人側)
では、個人の面から見たデメリットに迫っていきます。
自主的な勤務時間の延長
多くの企業では始業時間、休憩、終業時間を上司に連絡することが一般的です。
しかし在宅勤務の場合、部下から終業の連絡があったからといって本当に業務が完了したか、連絡があった時間以降に全く作業をしていないのかどうかは上司には分かりません。
労働時間とノルマが決まっていて、思うような結果が得られなかった場合あなたならどうしますか。
「上司には伝えず、引き続き作業する」と答える方も多いのではないでしょうか。
また、全社的に在宅勤務を実施している企業であれば問題ありませんが、特定の社員にのみ在宅勤務が許されている場合、「出社している人と比べて出社を免除されている」という状態で残業代を丸々申請できる人は、全員ではないでしょう。
このように働きすぎを懸念して、社員が在宅勤務に踏み切れないケースもあります。
プライベートと仕事の混同
仕事をしているときも、仕事終わりに晩酌をしているときも、場所は変わらずに自宅です。
物理的に仕事とプライベートを区別をすることが難しく、勤務時間やスケジュール、タスク量を管理・調節することが求められます。
また、起きる時間や勤務を開始する時間に融通がきくからこそ、ついつい自分に甘くなってしまうこともあるため、特に自己管理が苦手な人は意識的に気をつけるようにしましょう。
正当な評価を受けづらい
「在宅勤務をしていると、正当に評価されない」という声もあります。
在宅勤務では仕事の結果だけが評価されがちで、プロセスや質などは評価されない傾向にあります。
また、企業側のデメリットでも述べたように、上司が普段顔を合わせていない部下に色眼鏡なく評価できるようなマネジメントができていないと公平に評価してもらえないリスクがあります。
刺激が少ない
家にいるだけで仕事が完結するので、外出する機会が減ります。
また最近はオンラインショッピングも発達しているため、その気になれば家からほとんど出ないまま生活できますが、家にいるだけでは世間との関わりが薄れ、刺激の少ない生活になってしまいます。
意識的に外出することを心がけましょう。
細かい意図を汲み取れない
出社していれば、指示された内容の意図や、文面だけでは汲み取れない情報などを得られますが、在宅勤務ではそれらの情報が十分に得られないまま業務をする必要があります。
相手が意図したことを正確に汲み取れているかは、細心の注意を払う必要があります。
慢性的な運動不足
自宅の中だけで生活の全てを行うことが出来てしまうため、運動不足には注意が必要です。
働き方革命について論じた「強いチームはオフィスを捨てる: 37シグナルズが考える「働き方革命」」という書籍の中で、「アメリカの健康保険会社「Atena(エトナ)」では35,000人の社員のうち半数がリモートワークをしており、リモートワークをしている社員はしていない社員と比べて体重が重いことが調査でわかった」という記載があります。
調査結果からわかるように、慢性的な運動不足から体重増加につながってしまうのです。
個人レベルでの意識的な健康管理能力が求められますね。
家庭環境に左右される
個人差があることですが、子どもや配偶者が家にいると仕事に集中できない人もいます。
その場合は、自宅に仕事部屋や集中できるスペースを確保できればいいのですが、確保できない家庭もあるかと思います。
確保できないのであれば、子どもや配偶者が家にいない時間帯を見計らって作業をしなければなりません。
しかし、子供が小学生であれば16時ごろに帰宅します。したがって7時間働くとしても昼休憩を考慮すると8時には仕事を始める必要があり、在宅勤務でも自由に時間を使えるとは言い難いです。加えて、子供がそれより低年齢であればもっと早い時間に帰宅するでしょう。
在宅勤務の課題への対策と今後の展望
それでは、どんなことに気をつけて在宅勤務を実施していくとよいのか、デメリットを踏まえつつ今後の展望も含めて述べていきます。
部分在宅勤務の実施
毎日在宅勤務をしていると自宅で働くことが当たり前になり、特別感が薄れます。
すると、中長期的に見たときに生産性が低下する恐れがあり、オフィスで勤務する従業員との生産性の違いも出てきてしまいます。
そこで毎日ではなく週2~3回の在宅勤務をする「部分在宅勤務」を実施すれば、在宅勤務の特別感を損ねることなく、上司と対面でのコミュニケーションも維持できます。
また在宅勤務を強制ではなく選択制にすれば、周囲との関わりが欲しい人は出社して、在宅勤務を望む人だけが在宅で仕事をすれば、それぞれの社員が自分の事情に合わせられます。
勤怠管理の徹底
前述したように、日々の勤務開始と終了について確認したり報告内容をしっかり定めておき、勤怠管理を徹底することが大切です。
最近は効率的に勤怠管理ができる勤怠管理システムの「ジョブカン勤怠管理」や「jinger勤怠」などがあるので、活用してみてはいかがでしょうか。
評価方法を明確に
デメリットで述べたように、在宅勤務に適した評価制度を整えておく必要があります。
評価が不適切だと、部下と上司の関係性の悪化のみならず、自分の成長機会を妨げていると感じて企業への信頼まで低下することもあります。しっかりと在宅勤務者をサポートできる評価体制を設けましょう。
こまめな情報共有
オフィスで働いていれば、ランチや細かい移動のスキマ時間に同僚・上司と会話することで、会社に関する様々な情報が入ってきます。
在宅勤務はその機会がない分、チャットツールで雑談ができるルームを設けたり、必要に応じてミーティングをしたりすることで在宅勤務者に情報共有をしましょう。
在宅勤務導入の準備
ここからは、より具体的な準備段階の話に入っていきます。
在宅勤務が可能な環境
どんな業務であっても電話やメールなどの連絡がきちんと取れ、安定したインターネット接続ができる環境が必須となります。
なぜなら自宅にいながら会社のメンバーとの連絡や情報収集ができなければ、業務を進めることが非常に困難となるからです。
中にはポケットWi-Fiや社用携帯など、在宅勤務に必要な環境設備を支給してくれる企業もありますが、設備を全く支給しない企業もあります。
在宅で仕事をしたい方は、在宅勤務に必要な環境設備を支給してくれる企業を探すとよいでしょう。
自己完結性が高い
上司への確認事項が多かったり指示待ちの期間が長いと、業務の効率が落ちて生産性が低下します。必要以上のやりとりや確認がなく、業務完了までの工程を在宅勤務者だけで一気にできるインフラ体制が整っていると在宅勤務との相性がいいでしょう。
顧客訪問が頻繁でない
顧客訪問が頻繁だと、顧客先まで移動することになるので在宅勤務との親和性が低くなります。たとえ在宅勤務が認められても、あまりその恩恵を感じることができませんね。
評価体制が整っている
課題としても挙げた「評価体制」ですが、やはり評価体制が整っていることは在宅勤務との適性を考える上で重要です。業務達成を質・量の双方向から総合的に判断できる成果主義を取り入れた評価体制が望ましいです。
社員の裁量が大きい
自己完結性が高いことと関連していますが、裁量が大きいことも在宅勤務では重要です。
IT、企画、開発、クリエイティブなどの業種は裁量権が大きい傾向にあります。
在宅勤務に利用できるICT機器の利用例
それでは、在宅勤務を推し進める際に欠かせないICT環境の整備について解説します。以下のシステムを活用すれば、在宅勤務だけでなくセキュリティ面での強化を図ることができます。
VPN(IP-VPN)の利用
VPNはVirtual Private Networkの略で、仮想プライベートネットワークという意味です。
VPNを構築することで、在宅勤務者が自宅のPCでも社内の専用回線と同様の作業ができます。
シンクライアント端末の利用
シンクライアントとは、クライアント端末から大容量の記憶媒体(HDDやSSD)を省いた端末のことです。仮想デスクトップと相性が良く、在宅勤務者が端末へのデータの保存をできなくなるため情報漏えいの対策になります。
Web会議システムの利用
Web会議用のアプリやツールを使えば、ビデオ通話ができるためオンライン上での会議が可能です。
チャットツールにもビデオ通話の機能が備わっていることが多いので、会社の規模や利用頻度に合わせて適したツールを利用しましょう。
勤怠管理システムの利用
先程ご紹介した勤怠管理システムの他に、以下のようなものもあります。
- 在席管理ソフト(勤務開始時に起動すれば在席を管理)
- 分単位カウントシステム(1分単位で給料をカウントでき、実労働時間を正確に把握)
- クラウド型タイムカードシステム(インターネットを介して出勤退勤管理)
リモートソフトウェアの利用
在宅勤務者のPCを社内から遠隔操作することができるので、在宅勤務者にトラブルが起きたときもリアルタイムで業務をサポートできます。
在宅勤務の仕事を探すにあたって
では、個人の方が在宅勤務で働ける企業を探す際のアドバイスを紹介します。
在宅勤務に向いている人
在宅勤務は、以下のような人にオススメです。
- 育児と介護を両立したい人
- 疾病や障害、居住地の関係で通常の勤務が困難な人
- 自分のスキルを武器に活躍したい人
これはもちろん一例なので、自身の境遇を踏まえて在宅勤務をするかどうかの参考にしてくださいね。
在宅勤務の求人を見るときのアドバイス
まず求人を探す際に、「在宅勤務」「テレワーク」と表記されている場合は大企業や設立年数の長い中小企業、「リモートワーク」と表記されている場合はベンチャー・スタートアップ企業であることが多いです。
自分の勤務する会社の規模について希望がある場合は参考にしてくださいね。
また、「フルリモート」とはフルタイムリモートの略で、全く出社せずに家やその他の場所で仕事をすることを指します。したがって「フルリモートOK」との記入がなければ、暗に週2~3回は出社を必要としている場合もあります。
これらを事前に押さえておき、理想と現実のギャップは少しでもなくしておきましょう。
さいごに
さて、在宅勤務については理解が深まったでしょうか。
2020年の東京オリンピック開催以降、交通機関の混雑緩和や都市機能の維持のため、在宅勤務がより推奨されていく可能性が高いです。
企業も個人も、オリンピックを契機として、在宅勤務を再考するのも悪くないでしょう。
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